一級建築士で「転職が初めて」という方も少なくありません。そのため、転職活動の具体的な方法がわからずに悩みを抱えるケースもあります。
そこで今回は、一級建築士が転職するメリットやコツを取り上げた上で、転職する方法を6つ紹介します。
一級建築士の転職先とは
一級建築士には、転職先として建築業界とそれ以外の選択肢があります。例えば、「建築設計事務所」で働く一級建築士は、転職時に同じ建設業界の別の会社を選びます。建設業界の転職先として、建設会社やハウスメーカー、不動産会社などが代表的です。
住宅設計に限らない転職先
一級建築士は、住宅設計でなくても転職先があります。例えば、住宅設備機器メーカーです。また、建築士として十分な経験を積んでいる方なら、建設コンサルタントの道も開けるでしょう。
それから、一級建築士はさまざまな土木関連の資格を取得する際に、受ける試験を免除されます。つまり、土木業務や電気設備関連の仕事をメインとした会社でも転職して活躍できます。
建設業界以外の選択肢もある
一級建築士の知識やノウハウは、住宅や建物を扱う行政の書類仕事や建築部品の物流業務にも通用します。そのため、自治体職員や国家公務員、物流会社への転職先も選択肢に入るのです。
一級建築士が転職するメリット
一級建築士は、転職することで以下のさまざまなメリットを得られます。
- 給与アップや待遇改善
- 新たな業務経験のチャンスになる
- 広い視野を持てるようになる
給与アップや待遇改善
1つ目のメリットは、転職で経営者や職場が変わり、給与アップが期待できることです。一級建築士の年収相場は400万~800万円と年齢や経験、就業先によって大きく変動します。全体の平均では700万円弱となっており、他職種に比べると給与が高い業界事情があります。
しかし、小さな建築設計事務所で利益率の低い仕事しか入らないケースもあります。また、役職のない若い建築士は、400万~500万円程度しか年収がないのです。しかし、転職することで年収が増えることがあります。
特にブラック企業に就職して一級建築士の資格を取得した場合、早々に転職して給与アップや待遇を改善することが自分にとっての大きなメリットとなるのです。
新たな業務経験のチャンスになる
2つ目のメリットは、転職の前と後で業務内容が変わり、新たな業務経験を積めることです。
一級建築士にとって、業務の幅が広がることは将来的に大きな仕事を任せられたり、独立して事務所を立ち上げたりする際に役立ちます。例えば、一級建築士は建築物の制限がないため、さまざまな設計や建築に携われますが、住宅やビル建築ばかりの設計業務になって、経験が偏ることも珍しくありません。
これは務める設計事務所やハウスメーカーの方針があり、どのような業務を引き受けているかで業務に偏りができるためです。公共物のモニュメントや建築デザインなどに携わる機会が減り、将来引き受けることのできる仕事の選択肢が減るでしょう。
そのため、転職してさまざまな設計・建築の経験を積むことです。それが将来のキャリアアップにも繋がります。
広い視野を持てるようになる
3つ目のメリットは、転職先で広い視野を持てるようになることです。一級建築士は会社の中で業務をこなしていると視野が狭まり、周囲から得られるスキルや経験が限られます。立ち会う下請け業者も固定されるのです。
そこで、転職して環境を一新して、いままでなかった広い視野を持てるようにします。その際、周囲の高度な技術を持つ建築士や技術者に刺激を受けることも可能です。
特に同じ建築士から得られるインスピレーションや高度な技術は、口頭や文書では伝わりにくく、見て経験することも大事です。そして、視野が広がれば、余裕を持って業務をこなせるようになります。
心理的な余裕は、問題を冷静に見極める手助けとなるでしょう。業務効率化や問題解決能力にも直結します。
一級建築士が転職する方法6選!
ここでは、一級建築士が転職する方法を具体的に6つ紹介します。
転職する方法 | 利用するメリット |
総合求人サイトを使う | 自分のペースで転職活動を進められる |
ハローワークに通う | 求職申込みで「失業保険」や「再就職手当」が受け取れる |
転職エージェントでサポートを受ける | 転職情報やノウハウがあり、質の高いなサポートを受けられる |
企業のホームページをチェックする | 転職者のライバルを減らせる |
前職のコネクションで転職先の企業紹介を受ける | 紹介を受けられれば採用の可能性が高い |
SNSの活用 | 経歴や個人の趣味趣向を相手企業に伝えやすく、コミュニケーションが取りやすい |
総合求人サイトを使う
1つ目の方法は、建築士向けの案件がある総合求人サイトを使うことです。大手の求人サイトには、建築士向けに転職求人を掲載しているため、条件検索やカテゴリ選択で絞り込んで簡単に求人を探すことができます。
また、求人サイトの中には、設計や施工管理に特化したサイトもあり、そこでは一級建築士におすすめの求人をチェックすることも可能です。
そして、面談やアドバイザーの求人提案などがありません。予定を急かされないため、自分のペースで転職活動を進められる方法です。
ハローワークに通う
2つ目の方法は、ハローワークに通って建設関連の求人を探すことです。ハローワークを利用した転職活動には、さまざまなメリットがあります。
例えば、求職申込みで「失業保険」や「再就職手当」が受け取れることです。また、ハローワークは公的なサービスのため、再就職先に問題がある場合や給与条件のごまかしなどがあれば、ハローワークに報告して改善を求めやすいことです。
もちろん、ハローワークに報告するだけで求人の悪質な行為がすべて解決するわけではありません。しかし、助言も受けやすく、辞めて再び職を探す流れに戻りやすいのです。
その上、ネット求人サイトよりも安心して利用できます。ハローワークにはサイトやアプリのサービスもあるため、求人サイトのような使い方もできるなど、公的なサービスでも利便性は低くありません。一級建築士の転職時におすすめです。
転職エージェントでサポートを受ける
3つ目の方法は、転職エージェントを利用して、サポートを受けながら求人を探すことです。
転職エージェントのメリットは、転職情報やノウハウの蓄積があり、そこからサポートを受けられることです。総合的な求人サイトを使わなくてもこの方法で転職しやすくなります。
また、大手の転職エージェントでは、多くの非公開求人を提供しています。転職先の相談や面談への対策など、サポートを受けながら非公開の給与条件が良い求人を見つけられるのです。
ただし、転職エージェントは基本的に担当制のサービスが多く、気楽ではなくなります。それが自由度の高い転職活動ができない、窮屈に感じやすいなどのデメリットがあります。
転職エージェントによっては求人に偏りがあるケースや担当者と上手くいかないケースなど、サービスの質が低いところにあたってしまうリスクもあるのです。
しかし、転職が初めてでじっくりサポートを受けたい方にはおすすめな方法です。
以下の記事で転職エージェントを利用する時の注意点などについて解説しています。
企業のホームページをチェックする
4つ目の方法は、企業のホームページをチェックしてエントリーすることです。
求人サイトや転職エージェントの求人は、企業が掲載料を支払って募集を出しています。さらに、掲載できるコンテンツの規格もルール内で限られています。例えば、動画は掲載できない、文字数が決まっているなどです。
そのため、費用削減や企業イメージの悪化防止を理由に、求人サイトに載せない企業もあります。そこで、企業のホームページにアクセスして、エントリーフォームから申し込む方法です。
企業によっては、独自の採用サイトを立ち上げて、そこで詳しい情報が見られることもあります。この方法なら求人サイトに依存した転職者のライバルを減らすことも可能です。
前職のコネクションで転職先の企業紹介を受ける
5つ目の方法は、前の職場で知り合った人や他社の役員・経営者のコネクションを通じて、転職先企業の紹介を受けることです。
一般的な求人サイトや転職エージェントを利用しないため、確実性は低いですが、紹介を受けることができれば無駄な転職活動を省略して、内定を得られます。
ただし、一級建築士を必要としているタイミングや人脈のコネを持つ人がいるなどの条件が揃わないと利用するのは難しいでしょう。
SNSの活用
6つ目の方法は、SNSを活用した転職活動です。
SNSが普及した2024年現在でもSNSで転職活動する方は多くありません。実際に転職で利用している人は2割もおらず、一般的な転職活動としては認知されていないのです。
しかし、SNSは自分の経歴や個人の趣味趣向などを相手企業に伝えやすく、またコミュニケーションが取りやすいというメリットがあります。
企業はこれを上手く利用して「人材を獲得したい」と考えるケースも増えているため、SNSで上手くひっかかれば、より条件にマッチした転職が実現します。
ただし、SNSの転職方法が体系的に確立されていないことや、企業側のアプローチを待つ必要があり、時間がかかるといった注意点があります。
一級建築士に転職する方法
一級建築士に転職するためには、資格を取得する要件を満たすために、二級建築士として4年の経験が必要です。例えば、建築設計事務所や施工管理会社など、二級建築士を採用している会社にまずは就いて、そこで経験を積んで資格を取得することでなれます。その後、一級建築士として自由に転職することも可能です。
また、二級建築士の資格のない方が一級建築士に転職する方法はありません。一級建築士の資格を持っているか、二級建築士の資格から実務経験で資格を上げるかしかありません。
そのため、未経験者が一足飛びで一級建築士に転職することはできず、まずは専門学校や大学(指定の建築関連の学部)に通って建築を学ぶか、もしくは建設会社の仕事やアシスタントで経験を7年積んで二級建築士の受験資格を得ることです。
一級建築士が転職に成功するコツ
一級建築士が転職に成功するためには、必要なことがあります。それは、転職方法を決めた後、下記のコツを押さえて活動を開始することです。
- キャリアを明確にイメージする
- 資格取得のストーリーや志望理由を整理する
キャリアを明確にイメージする
最初に、キャリアや転職先での業務を具体的に考えることです。前職の経験をそのまま活かしたいのか、それともまったく別業務をしたいのかでは、探す求人も変わってくるからです。年収や労働に関する独自の企業制度度なども見極めます。
転職でキャリアアップを考えている方は、以下の記事も併せてご参考ください。
資格取得のストーリーや志望理由を整理する
資格取得に至ったストーリーや志望理由を整理しておくことも大事です。採用時に有利な資格の一級建築士といえど、面接は必須となる場合が少なくありません。
その際に、一級建築士を取得するに至った経緯や具体的な話ができるようにし、志望理由を明確にしておくことです。面接を通じてアピールすることで、採用されやすくなります。
一級建築士の転職まとめ
一級建築士の転職は、メリットやコツを押さえて、自分にあった方法で進めることが大切です。一級建築士は給与が一般的な相場よりも高めに設定されることが多く、転職するだけで年収を上げることもできます。
今回取り上げた方法を駆使して、これからの転職活動に上手く利用しましょう。
