ものづくりを担う業界である「製造業」について、どのような仕事があるのかイメージが湧かないとお悩みの人も多いでしょう。また、どれくらいの年収を期待できるのか、求人募集の条件には何があるのかを気にしている人もいるはずです。
そこでこの記事では、製造業の仕事内容や職種、年収等についてわかりやすくまとめました。
求められるスキルや代表的な会社の特徴も紹介しているので、製造業への就職・転職を検討中の方はぜひ参考にしてみてください。
製造業とは簡単に言うと何?
製造業とは、次のような「もの」の生産を担う業界のことです。
- 食品・日用品
- 電子機器
- 衣料品
- 医薬品
- 車両
- 建築・土木製品
読み方は「せいぞうぎょう」であり、原材料の確保、加工、組み立てなどを通じて製品を生産するほか、その後の販売にも対応します。
また製造業では、消費者を対象としたBtoC向けだけではなく、企業を対象としたBtoB向けにサービスを展開している企業もあります。ものづくり全般を担う業界であることから、国内における生活・ビジネスの土台を支えているのが特徴です。
もし20代で製造業への転職を希望している人は、以下の記事をチェックしてみてください。
メーカーとの違い
製造業とよく混同されやすいのが「メーカー」です。
以下に製造業とメーカーとの違いを整理しました。
製造業 | メーカー | |
立ち位置 | メーカーを含む業種の「相称」 | 製造を担う「企業」 |
以上より、製造業のなかで活動している企業のことをメーカーと呼びます。
例えば、自動車関連の製造を担う企業は自動車メーカー、食品の製造を担う企業は食品メーカーと呼ぶイメージです。
製造業の主な業種一覧
製造業には、分野ごとにさまざまな業種が存在します。
以下に、製造業に関わる業種と、事業内容について一覧に整理しました。
製造業の主な業種 | 事業内容 |
自動車メーカー | 乗用車や商用車、電気自動車(EV)、燃料電池車(FCV)などを製造する |
家電・電機メーカー | テレビ、エアコン、冷蔵庫、洗濯機、電子レンジなどの家庭用電化製品を製造する |
半導体メーカー | スマートフォンやパソコン、自動車、産業機械に使用される半導体を設計・製造する |
精密機器メーカー | カメラ、プリンター、医療機器、光学機器、時計などを製造する |
化学メーカー | プラスチック、合成繊維、化学薬品、電子材料などを製造する |
食品メーカー | 乳製品、調味料、即席麺、飲料などを製造する |
製薬メーカー | 医薬品の研究・開発・製造を行う |
航空・宇宙メーカー | 航空機のエンジンや機体部品、ロケットの開発を行う |
業種ごとに製造・開発する製品が異なります。
就職・転職で求人を探す際には、興味のある分野を調べてみてください。
製造業の主な職種一覧
ひとことで製造業と言っても、さまざまな職種の方たちが働いています。
参考として以下に、製造業に関係する職種と仕事内容を一覧に整理しました。
製造業の主な職種 | 仕事内容 |
商品企画 | 新しい製品を生み出す第一歩となる仕事であり、市場のトレンドや消費者のニーズを分析しつつ、製造すべき製品のアイデアを企画する |
研究開発 | 新技術や新製品の開発を担当する職種であり、新しい材料や部品の選定・評価を行いながら、より高性能な製品を生み出すための試行錯誤を重ねつつ、製造の改善に取り組む |
生産技術 | 製造プロセスを設計し、効率的で安定した生産体制を確立する職種であり、どのような設備や機械を導入すれば最適な生産ができるのかを検討し、導入機器や工場内のレイアウトなどを考える |
生産管理・品質管理 | 計画通りに製品を製造できているのかを管理する職種であり、決められた品質やルール(ISOや規格)を満たしているのか、専門家としての立場から確認する |
製造 | 実際に製品をつくる工程を担う職種であり、工場の生産ラインで機械や設備を操作し、材料を加工したり、部品を組み立てたりして製品を生み出す |
営業 | 自社製品を顧客(消費者や企業)に提案・販売する仕事であり、新規顧客の開拓はもちろん、既存の取引先へのフォローなどに取り組む |
広報 | 企業のブランド価値を高めるために活動する職種であり、Webサイトの運営やSNSの発信、広告展開などに取り組む |
法務・総務・人事(事務) | 製造企業の業務体制や経費処理、人材採用などに取り組む職種であり、主に事務的な仕事を実施する |
製造業に「工場でものをつくる」というイメージをもつ人もいますが、実際にはアイデア出しに関わる企画、外回りをする営業、製造品質の管理などさまざまな職種があります。
自身のスキルを活かせる職種も多いため、気になる働き方がある場合には、製造業を就職先・転職先として検討してみてはいかがでしょうか。
製造業の平均年収

国税庁が令和5年9月に発表した民間給与の実態統計調査によると、製造業の平均年収は532万7,000円です。また製造業の賞与については年間平均106万1,000円もあり、安定した収入源を確保できます。
ちなみに全業種の平均年収は457万6,000円、平均賞与は71万6,000円です。
平均よりも高い収入を確保しやすいことから「高収入を得やすい就職先を探している」「収入アップを目指せる転職先を探したい」という人に最適な業界だと言えます。
CADスキルがあれば平均年収アップも可能
前述した製造業の平均年収よりも多くの収入を得たいと考えているなら、CADといった専門スキルを身につけるのがおすすめです。
特に製造業ではエンジニア系の待遇がよく、AutoCADやAutodesk FusionといったCADソフトを使って設計ができる人ほど重要な仕事を任せられやすくなります。CADスキルに興味がある方は、ぜひ次のセミナーなどに参加して、専門知識とスキルを身につけてみてください。
製造業はやめとけと言われる理由
製造業に関わる会社は数多くある一方で、一部の人たちから「やめとけ」と言われています。
なぜやめとけと言われるのか、その理由を整理しました。
働き方による理由

製造業に従事すると、次のような働き方に関する不満を感じやすいことから「やめとけ」という話が出てきます。
- 同じ作業を繰り返すことにやりがいを感じにくい
- 納期に向かって作業を進めるため残業が発生しやすい
- 一部のスキルしか身につかない
- ひとつのミスで大きな損が生まれる
- ケガをするリスクがある
工場の現場作業を担当する場合には、繰り返し作業が発生する影響で仕事にマンネリを感じやすいほか、残業時間が長くなりやすいことが、やめとけと言われる理由のひとつです。
また同じ作業ばかりをする関係で、製造全体の知識やスキルが身につきにくいことであったり、ミスによる責任が重大であったりと、働き方に不満を感じる人もいます。
さらには製造業は労災による死傷者数が多く、厚生労働省によると、建設業に次いで2番目に死亡者数が多いことがわかっている点なども含め、やめとけという声が出ているようです。
なお近年ではDX(デジタル・トランスフォーメーション)により、徐々に上記の不満や課題が解決しつつあります。
職場環境による理由
製造業では、現場ではなく職場環境に対して次のような不満を感じて「やめとけ」と言う人がいます。
- 製造工場によっては空調設備が整っていない(労働環境に差がある)
- シフト制の製造企業の場合には生活リズムが崩れやすい
- 年功序列の体制であることが多いため、入社後の収入アップに時間がかかる
例えば古い工場の場合には、空調設備が整っていない影響で夏は暑く、冬は寒いという状況のなか、仕事をしなければならないことがあります。
また24時間のシフト制が組まれている会社の場合には、自律神経が乱れてしまうほか、家族コミュニケーションを取りづらくなる点に不満を感じやすいです。ほかにも年功序列による社員評価の影響で、頑張っても給与が上がりにくいなど、複数の課題があります。
なお、製造業界すべてが上記にあてはまるわけではありません。
しっかりと比較検討やヒアリングを実施すれば、快適な職場環境で働くことも可能です。
また、製造業への転職を成功させたい方は、以下の記事をチェックしてみてください。
製造業の仕事に求められる知識・スキル
製造業の仕事には複数の職種が絡んでいますが、そのなかでも重要視される知識・スキルは次の通りです。
- 製造全体の流れに関する知識
- スケジュール管理スキル
製造業の場合、サプライチェーンとの連携を図る必要があるため「どこから材料を手に入れるのか」「自社で製造した製品をどのように出荷するのか」などを管理することが必要です。そのため、製造業に従事する前に、全体の工程や流れを理解しておくと働きやすくなります。
また、製造業では製造のスケジュールが細かく決められていることから、計画力やスケジュール管理能力が必要です。なお、製造業では複数名で連携をして動く必要があるので、コミュニケーション能力などがあると、スムーズに業務を進行しやすくなるでしょう。
もし製造業のなかでもエンジニア系の職種に興味をお持ちなら、以下の支援サービスを利用してみてください。
製造業の代表企業一覧
「製造業の会社をイメージできない」という人向けに、代表的な企業の概要について整理しました。
製造業の会社 | 業種 | 事業概要 |
トヨタ | 自動車メーカー | ガソリン車の製造のほか、自動車の電動化、自動運転化の開発に取り組んでいる |
パナソニック | 総合電機メーカー | 家電、住宅設備、車載機器、産業用ソリューションなどの製造に取り組むほか、BtoB向けのIoTソリューション事業にも力を入れている |
三菱重工業 | 総合重工メーカー | 航空宇宙、防衛、エネルギー、産業機械などの幅広い事業を展開している |
ソニーグループ | 総合電機メーカー | テレビやカメラ、オーディオ機器などの製造を担うほか、エンタメコンテンツの制作にも取り組んでいる |
上記の会社はあくまで一例です。
国内外で活躍している製造業のメーカーは複数あります。
就職先・転職先としても人気であるほか、厚待遇な求人等も見つかりやすいのが特徴です。
製造業という分野に興味をお持ちなら、ぜひ上記のような会社について詳しい求人情報をリサーチしてみましょう。
製造業についてまとめ
製造業は、日本全体の生活・ビジネスの根幹を担う「ものづくり」に強い業界です。
数多くの業種にメーカーがあるほか、新技術などを導入している工場なども多いため、働きがいのある仕事をスタートできます。
一部で「やめとけ」という声はあるものの、しっかりと求人を取捨選択すれば、就職・転職の後悔を防げます。製造業の全体像を理解できたのなら、ぜひこの機会に魅力的な求人を探してみてください。
