会社を退職したあと、何から手をつければいいのかわからないと戸惑っていませんか。退職後は、健康保険の切り替えや年金の変更、失業手当の申請、税金の支払い方法の変更など、やらなければならない公的手続きがいくつもあります。
しかも、それぞれに期限があり、必要書類や手続き先も異なるため、情報を整理しておかないと抜け漏れが発生しやすくなるでしょう
この記事では、退職後に必要な手続きを一つずつわかりやすく解説しながら、何を、いつまでに、どこで、どうやって行えばよいのかを時系列で見ていきましょう。
退職後に必要な手続きとは
会社を退職したあとには、健康保険や年金の切り替え、失業保険の申請、税金関連の対応など、複数の公的な手続きが必要になります。手続きは、生活や将来の保障に関わる重要なものであり、適切な時期に正しく行うことが求められるでしょう。
ここでは、退職後に行うべき主な手続きとその重要性、注意すべき期限について整理して解説していきます。
退職後の手続きが必要な理由
会社員として働いていた間は、社会保険料や税金の支払いなどをすべて会社が代行してくれていました。しかし、退職後は手続きを自分自身で行う必要があります。放置してしまうと、医療保険が使えなかったり、将来の年金受給額に影響が出たり、税金の滞納となってしまうリスクがあります。
さらに、失業手当を受け取るには、ハローワークでの申請が必要で、申請が遅れると受給開始も遅れてしまいます。退職後に必要な手続きをしっかりと行うことは、生活を安定させるためにも非常に大切なステップです。
退職後の手続き期限順リスト
退職後の手続きは、期限が定められているものが多く、順番に進めることが非常に重要です。ここでは、やるべき手続きを申請期限順にリストアップし、必要書類や手続き先、ポイントもあわせて整理しました。
手続き内容 | 申請期限 | 必要書類 | 手続き先 | ポイント |
---|---|---|---|---|
健康保険の切り替え(任意継続 or 国保 or 扶養) | 退職翌日から14日または20日以内 | 健康保険資格喪失証明書など | 協会けんぽ、市区町村、配偶者の勤務先 | 無保険を防ぐため最優先 |
国民年金の切り替え(第1号または第3号) | 退職翌日から14日以内(扶養なら5日以内) | 年金手帳、退職証明書など | 市区町村、配偶者の勤務先 | 未納期間を作らない |
失業保険の申請 | 退職後すぐ〜1年以内 | 離職票、本人確認書類 | ハローワーク | 支給開始まで待機期間あり |
住民税の納付方法変更 | 退職後の翌月〜 | 納税通知書 | 市区町村 | 普通徴収への切り替え |
所得税の確定申告 | 翌年2月16日〜3月15日 | 源泉徴収票、医療費控除書類など | 税務署 | 還付対象なら早めに申告 |
抜け漏れがないよう、この一覧を参考に順番に進めていきましょう。
退職後の健康保険の切り替え手続き
退職後、最も早く対応すべきなのが健康保険の切り替えです。退職と同時に会社の健康保険の資格は失効するため、医療費が全額自己負担になる「無保険状態」になるリスクがあります。万が一に備え、退職後すぐにいずれかの制度に加入することが必要です。
選択肢は主に3つあります。
- 任意継続被保険者制度を利用する(最大2年、在職時の保険を継続)
- 国民健康保険に加入する(市区町村で加入手続き)
- 家族の健康保険に扶養として入る(年収条件を満たす場合)
任意継続は退職翌日から20日以内、国民健康保険や扶養手続きは14日以内が原則です。自分の状況に合わせて最適な選択をし、早めに行動しましょう。
任意継続被保険者制度を利用する場合
任意継続被保険者制度とは、退職前に加入していた健康保険を、最大2年間、自分で保険料を支払って継続利用できる制度です。会社を退職しても同じ保険を継続できるため、手続きが比較的シンプルで、扶養家族の保険も維持しやすいという特徴があります。
ただし、保険料は全額自己負担となり、在職中の2倍程度になることが一般的です。また、加入するためには「退職前に継続して2カ月以上その健康保険に加入していたこと」および「退職日の翌日から20日以内に申請すること」という条件があります。
申請は、前職が加入していた健康保険の保険者(協会けんぽまたは健康保険組合)に対して行いましょう。
国民健康保険に加入する場合
任意継続を選ばない場合や、条件を満たさない場合は、住民票のある市区町村で国民健康保険への加入手続きを行います。国民健康保険は、市区町村が運営する制度で、自営業者や退職後の無職期間中の人などが対象になります。
申請期限は、退職日の翌日から14日以内です。遅れて申請すると、医療費の給付を受けられない期間が発生することがあるため、早めの手続きが重要です。
必要書類には、健康保険資格喪失証明書、本人確認書類(マイナンバーカード、運転免許証など)、印鑑や通帳などが含まれます。自治体によって必要書類が異なる場合もあるため、事前に市区町村の公式サイトなどで確認しておくと安心です。
保険料は前年の所得や世帯人数によって決まるため、任意継続よりも安くなるケースもありますが、退職金の受け取りや高所得の場合は割高になる可能性もあるでしょう。
家族の健康保険に扶養で加入する場合
配偶者など家族が会社の健康保険に加入している場合、扶養に入ることで自身が保険料を支払うことなく健康保険に加入できる可能性があります。保険料の負担がなくなるため、収入が減る退職後には特に有利な選択肢といえるでしょう。
ただし、被扶養者として加入するためには、年収が130万円未満(60歳以上または障害者の場合は180万円未満)など、一定の条件を満たす必要があります。家族の健康保険組合や協会けんぽにて条件を確認し、扶養認定の手続きを行いましょう。
申請は、被保険者(扶養する側)の勤務先を通じて行い、必要書類には退職証明書、所得証明、住民票などが求められることがあります。審査に時間がかかることもあるため、早めに手続きを始めましょう。
健康保険の詳細を知りたい方は、下記をご覧ください。
退職後の年金の切り替え手続き
会社を退職すると、それまで加入していた厚生年金(第2号被保険者)の資格を喪失します。そのため、退職後も年金制度の対象であり続けるためには、国民年金への切り替え手続きが必要です。
- 自営業や無職となる場合は「国民年金第1号被保険者」
- 配偶者の扶養に入る場合は「国民年金第3号被保険者」
第1号への切り替えは退職翌日から14日以内、第3号への切り替えは5日以内に行うのが原則です。年金の未納期間ができると将来の年金受給額に影響するため、忘れずに手続きを済ませましょう。
国民年金第1号被保険者への切り替え
再就職までの期間が空く場合や、フリーランス・自営業を始める場合は、国民年金第1号被保険者としての手続きが必要です。20歳以上60歳未満のすべての人が対象となる基礎的な年金制度です。
保険料は毎月一定額が設定されており、納付方法も口座振替や納付書払いなどから選べます。経済的に保険料の納付が難しい場合には、申請によって「保険料免除」や「納付猶予」制度を利用することも可能です。
切り替えを怠ると未納期間が発生し、将来の年金受給額に影響が出るため、速やかな手続きを心がけましょう。
国民年金第3号被保険者になる場合
退職後に配偶者の扶養に入り、配偶者が厚生年金に加入している場合は、「国民年金第3号被保険者」として登録されます。この場合、自分で保険料を支払う必要はなく、配偶者の年金制度の中で年金加入者として扱われます。
第3号被保険者になれるのは、配偶者の収入に扶養されていて、自身の年間収入が130万円未満(※一部条件により例外あり)の人です。主に専業主婦(夫)やパート勤務で年収が少ない人が対象になります。
申請手続きは、配偶者の勤務先を通じて行います。必要書類には、被扶養者異動届のほか、退職証明書、住民票、所得証明書などが求められることがあります。配偶者が所属する健康保険組合や協会けんぽによって手続きが異なるため、事前に確認しましょう。
退職後の雇用保険(失業手当)の手続き
退職後、しばらく再就職の予定がない場合には、雇用保険(失業手当)の受給を検討することになるでしょう。再就職を目指して積極的に活動している人を支援する制度で、一定の条件を満たしていれば国から給付金を受け取ることができます。
自己都合退職の場合は7日間の待機期間に加えて、さらに給付制限(通常2か月)が設けられ、会社都合退職の場合は待機期間後すぐに受給が始まります。支給をスムーズに受けるためにも、離職票が届いたら速やかに手続きを進めましょう。
ここでは、受給の条件と必要な手続きについて見ていきましょう。
受給資格と条件
雇用保険の失業手当を受け取るには、基本的に退職前に雇用保険へ一定期間加入していたことが条件になります。さらに、受給には「働く意思と能力があること」「積極的に就職活動を行っていること」が求められます。
以下は主な受給資格と条件をまとめた表です。
条件項目 | 内容 |
---|---|
雇用保険の加入期間 | 退職日以前の2年間に通算12か月以上の被保険者期間があること |
退職理由 | 自己都合、会社都合で内容と待期期間が異なる |
就職の意思 | 就職する意思があり、就職活動を行っていること |
年齢制限 | 原則として65歳未満 |
会社都合による退職であれば、待機期間後すぐに給付が始まりますが、自己都合退職の場合は待機期間に加えて給付制限期間が発生するため、実際の支給まで1か月以上かかるケースもあります。早めにハローワークに相談してスケジュールを把握しておくことが大切です。
必要書類と申請の流れ
失業手当を申請するには、退職後に最寄りのハローワークで手続きを行う必要があります。申請時には、必要書類をそろえて提出しましょう。
手続きに必要な主な書類は以下の通りです。
- 雇用保険被保険者離職票(1と2)
- 本人確認書類(運転免許証やマイナンバーカードなど)
- マイナンバーが確認できる書類(マイナンバーカードや通知カードなど)
- 証明写真(縦3センチ、横2.5センチ程度のもの2枚)
- 印鑑(シャチハタ以外)
- 預金通帳やキャッシュカード(振込先確認のため)
書類を持参し、ハローワークで求職の申し込みを行うことで、失業の状態にあることが正式に認定されます。最初の認定から7日間は「待機期間」となり、この間に就職が決まると失業手当は支給されません。
また、給付制限期間が設けられる自己都合退職の場合は、さらに1か月以上待つ必要があります。そのため、できるだけ早めに離職票を受け取り、ハローワークで手続きを済ませることがスムーズな受給につながります。
退職後の税金の手続きと注意点
退職後は、健康保険や年金だけでなく、税金に関する手続きも必要になります。特に注意したいのが住民税と所得税です。これまで会社を通じて天引きされていた税金の支払いが、自分で行う「普通徴収」に切り替わることになるため、滞納などのトラブルが起こらないようスケジュールを把握しておくことが大切です。
また、年の途中で退職して年末調整が受けられなかった場合は、翌年の2月16日から3月15日までの間に確定申告が必要。医療費控除やふるさと納税などで還付が見込める場合もありますので、忘れずに申告しましょう。
ここでは、退職後の税金に関して押さえておくべき3つのポイントを整理して解説します。
住民税の納付方法の変更
住民税は前年の所得に基づいて課税されるもので、原則として6月から翌年5月にかけて分割で支払います。会社員として働いていた場合は、毎月の給与から住民税が自動的に天引きされる「特別徴収」という方法で納めていました。
しかし、退職すると特別徴収が終了し、住民税の支払い方法が「普通徴収」に変わります。普通徴収とは、自宅に届く納税通知書に基づき、年4回に分けて納める方法です。納税は金融機関やコンビニなどで行うことができます。
退職した時期によっては、最後の給与から未納分が一括徴収される場合や、すぐに普通徴収へ切り替わる場合もあるため、退職月の住民税の取り扱いについては事前に確認しておくと安心です。
所得税と年末調整・確定申告の違い
所得税は、毎月の給与から源泉徴収という形であらかじめ納めており、年末に1年分の税額を精算する「年末調整」によって過不足が調整されます。会社員であれば、通常は勤務先が年末調整を代行してくれるため、自分で手続きする必要はありません。
しかし、年の途中で退職し、その後再就職しない場合などは、自分で「確定申告」を行って税額を確定させる必要があります。
以下の表に両者の違いをまとめました。
区分 | 年末調整 | 確定申告 |
---|---|---|
手続き方法 | 勤務先が代行 | 本人が税務署に申告 |
対象者 | 同じ会社で1年を通じて働いた人 | 転職して年末に勤務先がない人など |
手続きの時期 | 12月(給与計算時) | 翌年2月16日から3月15日まで |
調整の内容 | 所得税の過不足を給与で自動調整 | 自分で納付または還付を受ける手続きを行う |
年内に再就職する場合でも、転職先で年末調整をしてもらうには、前職の源泉徴収票を提出する必要があります。提出が遅れたり転職が年末に近かった場合は、転職先で年末調整ができず、自分で確定申告が必要になることもあるでしょう。
確定申告が必要になるケース
退職後に確定申告が必要となるのは、年末調整が行われなかった場合や、一定の条件に該当する場合です。
以下のようなケースでは、自分で税務署に申告する必要があります。
- 退職後に再就職せず、年内に収入があった
- 年内に転職したが、前職の源泉徴収票を提出できず年末調整を受けていない
- 失業手当の受給は所得にならないが、アルバイト等の副収入があった
- 退職金を受け取ったが、税金の精算が済んでいない
- 年間の医療費が10万円を超え、医療費控除を受けたい
- ふるさと納税や住宅ローン控除などで控除の申請をしたい
- 年収が2,000万円を超えている
確定申告を行うことで税金の還付を受けられることもあります。申告期間は原則として翌年の2月16日から3月15日までとなっており、期日を過ぎると延滞税や無申告加算税が発生する可能性があるため注意しましょう。
確定申告の詳細を知りたい方は、下記をご覧ください。
退職後に会社から受け取るべき書類
退職の際には、会社から受け取るべき重要な書類が複数あります。書類は、健康保険や年金、失業保険の手続き、税務申告など、退職後の各種手続きを行う上で欠かせません。
受け取り漏れや紛失があると、手続きが遅れたり、再発行の手間がかかったりするため、事前にどのような書類が必要かを把握し、確実に受け取るようにしましょう。
以下に、主な書類とその用途、交付タイミングなどをまとめました。
書類名 | 主な用途 | 交付タイミング |
---|---|---|
雇用保険被保険者離職票 | 失業保険の申請に必要 | 退職後に会社が発行(要申請) |
源泉徴収票 | 年末調整や確定申告に必要 | 退職後1か月以内に交付 |
健康保険被保険者証 | 医療機関での保険利用に使用(返却) | 退職日までに返却 |
健康保険資格喪失証明書 | 国民健康保険の加入手続きなどに使用 | 退職後に会社へ依頼 |
年金手帳または基礎年金番号通知書 | 年金の切り替え手続きに必要 | 会社が保管している場合あり |
退職証明書 | 各種公的手続きや転職時に必要な場合あり | 会社に依頼すれば即日発行可能 |
書類のうち、特に「雇用保険被保険者離職票」と「源泉徴収票」は多くの手続きで使用されるため、受け取りの有無を必ず確認してください。また、退職証明書などは必要になったときに会社へ依頼すれば発行してもらえることが多いため、用途に応じて活用しましょう。
書類の原本は公的な手続きの際に求められることもあるため、大切に保管しておくことが重要です。受け取るタイミングや保管場所を把握し、退職後の手続きをスムーズに進めましょう。
退職前に転職先を決定するのもおすすめ
退職後の不安をできるだけ減らすためには、事前に次の就職先を決めておくことが非常に有効です。転職先が決まっていれば、失業期間をつくらずに社会保険や年金の切り替えがスムーズに行えますし、経済的な不安も最小限に抑えられます。また、健康保険や年末調整などの面でも、手続きが簡素化されるメリットがあります。
特に専門職や技術職など、経験を活かせる分野であれば、転職先の選定も計画的に進めやすく、条件交渉やキャリア形成についてもじっくり検討することができるでしょう。退職後に焦って仕事を探すよりも、自分に合った環境を選びやすいのが特徴です。
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退職後手続きのまとめ
退職後の各種手続きをスムーズに進めるためには、事前の準備と正確な情報の把握が欠かせません。今回ご紹介した内容を参考に、必要な書類を確実に受け取り、各種手続きを期限内に済ませておくことで、退職後の生活に余裕と安心を持つことができます。
慣れない手続きに不安を感じるかもしれませんが、ひとつずつ丁寧に対応すれば難しいことはありません。もし迷った場合は、市区町村の窓口やハローワークなどに相談しながら進めていきましょう。
将来の不安を最小限に抑えるためにも、ぜひこの機会に必要な対応を早めに済ませておくことをおすすめします。
