経理は企業の財務を支える重要なポジションであり、安定した需要があります。しかし、未経験からの挑戦や、キャリアアップを目指す際には、いくつかのポイントを押さえて転職活動をする必要があります。
本記事では、経理職の転職を考えているあなたに、転職市場の動向、役立つスキルや資格、キャリアパス、そして転職を成功させるための具体的なポイントを解説します。
経理職は転職しやすい?
経理職は、結論から言うと転職しやすい職種です。その理由は、企業にとって経理は必要不可欠な部門であり、常に一定の求人ニーズがあるためです。また、専門スキルや経験は他社でも活かしやすく、即戦力として評価されやすい点も、転職のしやすさにつながっています。
もちろん、より良い条件を求めるなら、スキルアップや資格取得、情報収集は欠かせません。
経理に転職する際に求められる資格
経理職への転職を目指す際には、特定の資格を取得しておくことで、採用担当者に対して自身のスキルや知識をアピールしやすくなります。以下では、経理職への転職に役立つ主要な資格を紹介します。
資格名 | 概要 | 特徴 | 転職でのメリット |
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簿記検定 | 企業の財務状況を把握し、会計処理を行う基礎知識を証明 |
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経理業務に必要な基本スキルを証明 |
FASS検定 | 経理・財務の実務スキルを測定する検定試験 |
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実務に直結したスキルを証明 |
公認会計士 | 財務諸表監査の専門家、会計分野の最高峰資格 |
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給与計算実務能力検定 | 給与計算の専門知識と実務能力を証明 |
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簿記検定
簿記検定は、企業の財務状況を正確に把握し、適切な会計処理を行うための基礎知識を証明する資格です。特に日商簿記2級は、商業簿記や工業簿記の高度な知識を有し、財務諸表の作成や分析ができる能力を示せます。
取得することで、経理業務に必要な基本的スキルを持っていることをアピールできます。試験は年に複数回実施され、合格率は約30%前後とされています。独学でも取得可能ですが、専門学校やオンライン講座を利用することで、より効率的に学習を進めることができます。
FASS検定
FASS(Financial Accounting Skill Standard)検定は、経済産業省の委託事業として一般社団法人日本CFO協会が主催する検定試験です。経理・財務部門で働く際の実務スキルを測定することを目的としており、資産、決算、財務、資金の4分野にわたる知識が問われます。
試験結果は合否ではなく、得点によりAからEまでの5段階で評価され、自身のスキルレベルを客観的に把握できます。FASS検定を受験することで、実務に直結したスキルを持っていることを証明でき、転職活動において有利に働くでしょう。
公認会計士
公認会計士は、企業の財務諸表が適切に作成されているかを監査する専門家であり、日本における会計分野の最高峰の資格とされています。この資格を取得することで、経理業務だけでなく、財務や経営戦略など幅広い分野での活躍が期待できます。
試験は短答式と論文式の2段階で構成され、合格率はそれぞれ約10%前後と非常に難易度が高いですが、その分取得後のキャリアの幅は広がります。なお、資格取得後は3年以上の実務経験と日本公認会計士協会への登録が必要となります。
給与計算実務能力検定
給与計算実務能力検定は、企業における給与計算の専門知識と実務能力を証明する資格です。給与計算は経理業務の中でも重要な役割を担っており、この検定を取得することで、給与計算に関する法律や社会保険、税務知識などを体系的に習得できます。
試験は1級と2級があり、2級では基本的な給与計算の知識を、1級ではより高度な実務能力が求められます。合格率は2級で約60~70%、1級で約40~50%とされています。公式テキストを用いた独学でも十分合格が可能であり、人事・総務部門との連携が求められる経理職において、大きな強みとなるでしょう。
経理に転職する際に役立つスキル
経理職への転職を目指す際には、専門知識だけでなく、業務を円滑に進めるためのスキルも重要です。ここでは、経理職への転職に役立つ主要なスキルを紹介します。
- コミュニケーション能力
- パソコンスキル
- マネジメント能力
①コミュニケーション能力
経理職は、数字を扱う業務が中心と思われがちですが、実際には社内外の多くの関係者と連携する必要があります。たとえば、他部署との予算調整や取引先との支払・入金に関する確認などがあります。
また、経営陣への財務報告や、税理士・会計士とのやり取りなど、専門的な内容を分かりやすく伝える能力も求められます。
②パソコンスキル
現代の経理業務は、ほとんどがデジタル化されており、パソコンスキルは必須となっています。特に、Excelを用いたデータ集計や分析、会計ソフトを使用した仕訳入力や決算業務など、日々の業務でパソコンを活用する場面が多々あります。
Excel操作で基本的な関数やピボットテーブルの操作、マクロの作成などができると重宝されます。また、クラウド型の会計ソフトやERPシステムの導入が進む中、これらのツールに対応できるITリテラシーも必要です。
ProSkilllでは、最速でExcelマクロ・VBAのプロを目指せるExcelマクロ・VBAセミナーを開催しています。これから事務職への転職を考えている方にはおすすめのセミナーです。
③マネジメント能力
経理職として経験を積むと、チームリーダーやマネージャーとしての役割を担う機会も増えてきます。その際に求められるのが、マネジメント能力です。具体的には、チームの業務進捗の管理や指導、業務プロセスの最適化、他部署との調整など、多岐にわたる業務を統括する力が必要です。
また、経営戦略に基づいた予算策定や資金管理など、経営的視点を持った判断力も求められます。マネジメント能力を身につければ、組織全体のパフォーマンス向上に貢献し、さらなるキャリアアップの道が開けるでしょう。
経理職に転職した場合のキャリアパス
経理職への転職を考える際、将来的なキャリアパスを明確にしておくことは大切です。以下にて、経理色のキャリアパスについて詳しく解説します。
スペシャリストとして専門分野を極める
経理のスペシャリストとは、特定の分野において高度な専門知識とスキルを持つプロフェッショナルを指します。たとえば、税務、連結決算、管理会計、国際会計などの分野で深い知識を習得し、企業内でその分野のエキスパートとして活躍する道です。
スペシャリストを選ぶことで、特定の専門領域における高い付加価値を提供でき、企業からの信頼も厚くなります。また、専門性を高めることで、将来的には公認会計士や税理士として独立する道も開けるでしょう。
ジェネラリストとして管理職へ昇進する
ジェネラリストとしてのキャリアパスは、経理業務だけでなく、財務、人事、総務など幅広い業務を経験し、組織全体のマネジメントを担う管理職を目指すものです。
経理部門内での昇進を重ね、主任、課長、部長とステップアップし、最終的にはCFO(最高財務責任者)や経営企画など、経営層の一員として活躍できます。ジェネラリストを目指すには専門知識だけでなく、リーダーシップや他部門との調整力、経営視点での判断力が求められます。
経理経験を活かした他部門へのキャリアチェンジ
経理で培った経験や知識を活かし、他部門へキャリアチェンジする道もあります。たとえば、経営企画部門では、経理での財務分析や予算管理のスキルが直接役立ちます。また、内部監査部門やリスク管理部門では、経理の知識を基にした業務プロセスの改善やリスク評価を行います。
営業部門や生産管理部門などで、数値管理やコスト意識を持った人材として活躍することも可能です。キャリアチェンジを目指す場合は、経理業務で培ったスキルを他部門の業務にどのように応用できるかを考え、積極的に異動や転職の機会を探ることが重要です。
なお、キャリアアップについては以下の記事で紹介しているので、ぜひ参考にしてください。
経理職への転職を成功させるポイント
経理職への転職を成功させるためには、自己分析や市場動向の把握、企業理解、そして応募書類の作成が重要なポイントです。ここでは、それぞれのポイントについて詳しく解説します。
- 自己分析とキャリアプランの明確化
- 転職市場の動向を把握する
- 応募企業の社風や理念を理解する
- 応募書類を詳細に作成する
- 面接対策を徹底する
①自己分析とキャリアプランの明確化
転職活動を始める前に、自身の経験やスキル、強みを客観的に分析し、将来的なキャリアプランを明確にすることが重要です。経理職と一口に言っても、業務内容や求められるスキルは企業や業界によって異なります。
たとえば、大企業では専門性の高い業務が求められる一方、中小企業では幅広い業務を担当することが多くなります。自分がどのような環境で、どのような役割を果たしたいのかを明確にすることで、転職先の選択肢が絞り込まれ、ミスマッチを防げるでしょう。
②転職市場の動向を把握する
経理職の求人市場は景気や業界の動向によって変動します。そのため、最新の求人情報や業界のトレンドを常にチェックし、自分のスキルセットが市場でどのように評価されるのかを把握することが大切です。
たとえば、グローバル展開している企業では、英語力や国際会計基準(IFRS)の知識が重視されることもあります。転職エージェントや業界専門の求人サイトを活用して、最新の市場動向を把握し、自分のスキルや経験がどのように評価されるのかを確認しましょう。
③応募企業の社風や理念を理解する
応募先企業の社風や経営理念を理解することは、入社後のミスマッチを防ぐために重要です。企業の公式ウェブサイトや採用情報、ニュースリリースなどで、企業のビジョンやミッション、価値観を把握しましょう。
また、社員のインタビュー記事や口コミサイトなどを参考に、実際の職場環境や雰囲気を知ることもおすすめです。自分の価値観や働き方が企業と合致しているかを判断し、志望動機に反映させて面接官に対して強い意欲と適応力をアピールしましょう。
④応募書類を詳細に作成する
履歴書や職務経歴書は、採用担当者にとって応募者を知る重要な手がかりです。特に職務経歴書では、これまでの経験や実績を具体的に記載し、自分の強みやスキルを明確に伝えましょう。
具体的には前職での業務改善やコスト削減の取り組み、チームのリーダーとして達成したプロジェクトなど、数字や成果を交えて説明すると効果的です。また、応募先企業が求めるスキルや経験に合わせて内容をカスタマイズし、自分が即戦力として貢献できることをアピールしましょう。
⑤面接対策を徹底する
面接は、あなたのスキルや経験、そして人柄を直接アピールできる大切な機会です。想定される質問への回答を事前に準備し、模擬面接などで練習を重ねましょう。経理としての専門知識だけでなく、コミュニケーション能力や問題解決能力、企業への熱意などを伝えることが大切です。
加えて、面接のマナーや身だしなみ、時間厳守といった基本的な点も意識し、自信を持ってハキハキと話すことを心がけましょう。
経理職で転職する際の求人情報の探し方
自分に合った求人情報を見つけるためには、いくつかの方法があります。ここでは、代表的な探し方をご紹介します。効率よく情報収集を行いましょう。
- 転職サイト・エージェントを活用する
- 企業の公式採用ページから応募する
- 知人や同僚からの紹介を受ける
①転職サイト・エージェントを活用する
転職サイトやエージェントは、多くの求人情報を集約しており、効率的に情報収集できます。特に、経理職に特化した転職サイトやエージェントを利用することで、専門的なサポートや非公開求人の紹介を受られます。
たとえば、「マイナビエージェント」は、初めて転職する方や未経験の方におすすめで、専任のキャリアアドバイザーが一貫してサポートしてくれるのが特徴です。
また、「doda」や「マイナビ転職」などの大手転職サイトも、経理職の求人を多数掲載しており、希望条件に合わせて検索できます。 これらのサービスを活用して、最新の求人情報を効率的に入手し、自分に合った職場を見つけましょう。
②企業の公式採用ページから応募する
志望する企業が明確にある場合や特定の業界で働きたい場合、各企業の公式サイトの採用情報を直接確認するのがおすすめです。公式サイトでは、最新の募集要項や企業の詳細な情報が掲載されており、企業の理念やビジョン、職場環境などを深く理解できます。
また、直接応募することで、企業への熱意や関心を伝えやすくなるメリットもあります。定期的に志望企業のサイトをチェックして、タイムリーに応募しましょう。
③知人や同僚からの紹介を受ける
人脈を活用した転職活動も有効な手段の一つです。知人や元同僚、取引先などからの紹介は、信頼性の高い情報源となり、企業の内部事情や職場の雰囲気など、公開されていない情報を得られるでしょう。
また、採用担当者に対して安心感を与える場合もあり、選考がスムーズに進むことも期待できます。日頃から人間関係を大切にし、情報交換を積極的に行うことで、思わぬチャンスが広がることもあるでしょう。
なお、転職を成功させるポイントを詳しく解説した記事もありますので、ぜひ参考にしてください。
経理職で転職する際の注意点
経理職への転職を検討する際には、業務特性や職場環境に関する注意点を理解しておくことが重要です。以下では、特に留意すべき3つのポイントを解説します。
- ルーティンワークが多い
- 繁忙期は休みにくい
- 転職回数をチェックされる
①ルーティンワークが多い
経理業務は、日々の仕訳入力や伝票処理、月次・年次決算など、定型的な作業が多くを占めます。これらのルーティンワークは正確性と継続性が求められ、同じ作業を繰り返すことに対して忍耐力が必要です。
そのため、変化の多い業務やクリエイティブな仕事を好む方にとっては、単調に感じる可能性があります。
②繁忙期は休みにくい
経理部門には、四半期決算や年度末決算、税務申告など、特定の時期に業務が集中する繁忙期があります。繁忙期では、通常業務に加えて追加の作業が発生し、残業が増えることや休暇を取得しにくくなることが考えられます。特に、決算期や税務申告の時期は、正確かつ迅速な対応が求められる上に業務量が膨大になるため、人によってはストレスを感じるかもしれません。
③転職回数をチェックされる
経理職は、企業の財務情報を扱う重要なポジションであるため、信頼性や忍耐力が重視されます。そのため、採用担当者は応募者の職務経歴書における転職回数や在職期間を注意深く確認します。
短期間での転職を繰り返している場合、「定着してくれないのではないか」と懸念され、選考において不利になる可能性があります。やむを得ない理由での転職が多い場合は、面接時にその背景を誠実に説明しましょう。
経理職への転職を目指すあなたへ
経理職への転職は、あなたの専門性を活かし、キャリアアップを目指す大きなチャンスです。この記事で紹介したポイントを参考に、まずは自己分析とキャリアプランの明確化から始めましょう。
情報収集を怠らず、準備をしっかり行えば、きっと納得のいく転職が実現できるはずです。数字の向こう側にある、あなたの新しい未来をぜひ切り拓いてください。
