「施工管理に興味はあるけれど、業界未経験で転職できる?」と疑問を持つ方もいるでしょう。建築業界は専門性が高く、経験者が優遇されるイメージがあるため、「未経験でも通用するのか」「実務に就くには資格が必須なのか」など、疑問を抱えてしまいがちです。
しかし、建築施工管理は深刻な人材不足が続いており、未経験者を積極的に採用して育てる企業も増えてきています。
本記事では、施工管理の仕事内容や求められるスキル、資格の必要性、未経験からの転職に向いている企業の選び方まで、詳しく解説します。
建築施工管理の転職は未経験でもできる
建築施工管理への転職は未経験でも可能です。厚生労働省の「jobtag」における建築施工管理の「入職前後の訓練期間、入職前の実務経験」では、現役で働いている労働者の25%が「実務経験は必要なし」と回答しています。
引用:厚生労働省|jobtag
近年は、建築業界全体で若手・中堅の人材不足が深刻化しており、「未経験者を育成してでも採用したい」という企業が増えているのが現状です。つまり、未経験者でも意欲があり、学ぶ姿勢があれば施工管理のキャリアは築けるということです。
建築施工管理の転職率
建築施工管理の転職率は、建設業界全体でも比較的高めとされています。2022年の国土交通省の調査によると、高卒入職者の3年以内の離職率は42.5%、大卒者でも30.1%と、全産業の中でも目立って高い数値です。
長時間労働や休日の少なさ、精神的なプレッシャーなど建設業全体に共通する労働環境の厳しさが要因とされています。
代表的な転職理由
建築施工管理技士が転職を考える理由の多くは、長時間労働や休みの取りづらさといった労働環境への不満です。現場と内勤の両方を担うことで業務量が多くなり、残業が常態化しやすい傾向にあります。また、給与が責任や負荷に見合わないと感じる人も多く、自分のスキルをより評価してくれる職場を求めて転職に踏み切るケースも。
他にも、評価制度への不満やキャリアアップ目的、家庭の事情、仕事内容のミスマッチなども理由に挙げられます。特に若手は、「思っていた働き方と違った」といったギャップが離職の原因になることもあります。
建築施工管理への転職は資格を取得するべき?
建築施工管理への転職を考える際、「資格がないと採用されないのでは?」と不安になる方も多いかもしれませんが、必ずしも転職時に資格が必要というわけではありません。実際、未経験者を「施工管理補助」として採用し、入社後に実務経験を積ませながら資格取得をサポートする企業も少なくありません。
ただし、将来的にキャリアアップや年収アップを目指すのであれば、施工管理技士などの国家資格は取得しておくべきです。資格があることで担当できる工事規模やポジションの幅が広がり、転職市場での価値も大きく高まります。
国家資格|建築施工管理技士1・2級
建築施工管理技士は、1級と2級に分かれており、それぞれの合格率や受験資格は以下の表を参照ください。
項目 | 2級建築施工管理技士 | 1級建築施工管理技士 |
試験構成 |
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受験資格 | 満17歳以上であれば、学歴や実務経験に関係なく受験可能 | 満19歳以上であれば、学歴や実務経験に関係なく受験可能 |
合格率 |
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2024年度から、建築施工管理技士の受験資格が緩和されました。学歴や実務経験に関係なく、一定の年齢に達していれば第一次検定を受験できるようになりました。
建築施工管理が不人気な理由
建築施工管理が不人気とされる主な理由は、仕事内容と待遇のバランスが取りづらい点です。そして理由は主に以下の3点です。
- 労働時間が長く、休みが取りづらい
- 現場によって環境がバラバラ
- 給与水準が見合わないと感じられている
ただし、建設業界における中心的なポジションであり、やりがいや達成感、技術力の向上を実感できる仕事でもあります。働き方改革やICT導入が進んでおり、環境改善の兆しもあるため、今後の変化に期待してもよい職業でしょう。
建築施工管理未経験者向け転職先の見極めポイント
未経験から建築施工管理へ転職を検討している方は、転職先の見極め方を知っておきましょう。
- 研修・育成制度が整っているか
- 残業時間と担当エリアは自分に合っているか
- 現場以外で活躍できるポジションはあるか
①研修・育成制度が整っているか
未経験から建築施工管理へ転職するうえで、重要なのが「研修制度や育成体制が整っているかどうか」です。いきなり現場に放り出されるような企業は、ストレスや挫折につながる可能性があります。そのため、未経験者向けの入社研修や、先輩社員によるOJT、施工管理技士の資格取得をサポートする制度が用意されているかを必ず確認しましょう。
求人票に「教育体制充実」「未経験から活躍中の社員多数」と記載がある企業は、実際に人材育成に力を入れている傾向があるため、必ず確認してください。
②残業時間と担当エリアは自分に合っているか
施工管理の仕事は現場ごとのスケジュールに左右されやすいため、労働時間が不規則になりがちですが、未経験から転職する際は「残業時間」と「担当エリア」が無理のない範囲に収まっているかを必ずチェックしましょう。
例えば、月の平均残業時間が40時間以上だったり、現場が自宅から遠く毎日長時間の移動が発生する場合は、体力的・精神的な負担が大きく、長く続けるのが難しくなります。特に未経験者は業務に慣れるまでに時間がかかるため、残業が少なく、担当エリアも本社や営業所から1時間圏内など、働きやすい環境の会社を選ぶことで早期退職を防げます。
③現場以外で活躍できるポジションはあるか
施工管理職=現場監督というイメージが強いかもしれませんが、建築業界には、未経験者でも始めやすく、将来的にスキルアップにつながる「現場以外」のポジションも存在します。
例えば、現場でのスケジュール調整や進捗管理を補佐する「施工管理アシスタント」や、図面修正や資料作成を担う「CADオペレーター」、または工事の発注・原価管理などを担当する「内勤施工管理」などが挙げられます。体力面の負担が少なく、事務スキルやITリテラシーを活かしてキャリアを築ける点が魅力です。
未経験から建築施工管理を目指せるおすすめの企業
未経験から建築施工管理を目指すのであれば、企業選びは重要です。ここでは、以下3つの企業を紹介します。
- 中小規模のゼネコン
- 戸建て住宅・リフォーム会社
- 設備工事・内装工事などの専門工事業者
①中小規模のゼネコン
未経験から建築施工管理にチャレンジするのであれば、中小規模のゼネコンはおすすめの転職先です。理由は、大手に比べて組織がフラットで社員同士の距離が近く、現場での実務を丁寧に教えてもらいやすいからです。
中小ゼネコンでは、さまざまな構造や規模の建物に携われる機会も多くあります。また、中小規模のゼネコンは地域密着型の企業が多いため、転勤や長距離出張の負担が少なく、移動時間などの負担を減らしたい方にもおすすめです。
②戸建て住宅・リフォーム会社
戸建て住宅メーカーやリフォーム会社は、施工管理未経験者にとって成長しやすい転職先でしょう。なぜなら、現場の工期が比較的短く、工事規模も大きすぎないため、業務フローや工程管理の基本を段階的に学びやすいためです。
また、顧客との打ち合わせや近隣住民への対応など「人とのやりとり」が多く発生するため、営業経験や接客経験がある人は、コミュニケーションスキルを施工管理業務に活かすことができます。近年ではリノベーションや省エネ住宅など、トレンドに対応した案件も増えており、若手や異業種出身の人材を積極的に採用して育成している企業も多いです。
③設備工事・内装工事などの専門工事業者
建築施工管理の中でも、電気・空調・給排水などの設備工事や、クロス・床・天井といった内装工事を専門に扱う工事会社は「専門スキルを効率的に身につけやすい」転職先としておすすめです。建物全体ではなく部分工事を担当するため、比較的短期間で業務の流れを理解でき、管理業務の基本を実践の中で繰り返し学ぶことができます。
また、専門分野に特化することで、「電気設備施工管理技士」や「管工事施工管理技士」など、資格取得にもつながりやすく、将来的に技術力で差別化を図りたい人には有効です。設備・内装はリニューアル案件やテナント改装などの需要が継続的にあるため、景気の波に左右されにくく、長期的なキャリア形成にも適しています。
未経験者が建築施工管理の転職を成功させる3つのコツ
建築施工管理の転職を成功させる未経験者がやるべき準備について以下3つを紹介します。
- 現場を知る
- 自己分析と業界分析を行う
- 転職エージェント選びが最重要
①現場を知る
未経験から建築施工管理へ転職を目指すうえで、大切なのは「現場を知る」ことです。施工管理はデスクワークと現場対応の両方が求められる職種であり、設計や図面の知識だけでなく、安全管理や工程調整、職人とのコミュニケーションなど、現場ならではの判断力や体力も必要とされます。
そのため、可能であれば建築現場の見学に参加したり、現職中でも関連現場を覗いてみたりすることで、実際の業務内容や雰囲気を体感しておくことが重要です。中には職場体験・現場インターンを受け入れている企業もあるため、積極的に利用しましょう。業務の現実を知ることで、入社後のギャップを減らし、早期離職を防ぐことにもつながります。
②自己分析と業界分析を行う
施工管理職はやりがいが大きい一方で、業務の幅も広く、現場によって求められるスキルやスタンスが異なります。そのため、未経験からの転職では「自己分析」と「業界分析」の両方が必須。
自己分析では、「自分が得意なこと・苦手なこと」「前職で評価された点」「働くうえで大切にしたい価値観」などを洗い出すことで、自分に合った働き方や職場環境が見えてきます。業界分析では、ゼネコン・ハウスメーカー・内装業者など、施工管理の中にも多様な分野があることを理解し、自分に合った業態を見極めることが大切です。この2つの分析ができていないと、「思っていた業務と違ってミスマッチだった」といった事態を招く恐れがあります。
③転職エージェント選びが最重要
建築施工管理職への転職を成功させるうえで、最も大きな差がつくのが「転職エージェント選び」です。特に未経験者は、求人票だけを見ても仕事内容や職場環境のリアルまでは分からないため、業界に精通したエージェントを利用して、ミスマッチを防ぎましょう。
建築施工管理に強いエージェントは、企業ごとの教育体制・残業実態・現場の雰囲気など、求人には書かれていない情報も把握しており、未経験からでも続けやすい企業を紹介してくれます。また、面接対策や職務経歴書の添削、資格取得のアドバイスまでトータルで支援してくれるため、安心して転職活動に臨めるのも魅力です。
未経験者におすすめの建築施工管理転職エージェント
未経験から建築施工管理に転職できるおすすめのエージェントを3つ紹介します。
- JobTech for CAD
- 施工管理ジョブ
- RSG建設転職
①JobTech for CAD
「ジョブテック for CAD」は、製造業・建設業界に特化した完全無料のCAD転職支援サービスで、未経験者から経験者まで幅広い求職者に向けて非公開求人や独占案件を多数紹介しているのが特徴です。
BIM推進リーダー候補やAutoCADオペレーターなど、多様な職種の正社員求人が掲載されており、年収400万〜850万円といった高待遇の案件も豊富。さらに、ジョブテックでは製造・建設業界に精通した専任エージェントが、キャリアの棚卸しから応募書類の添削、面接対策、内定獲得まで丁寧にサポートしてくれるため、転職が初めての方でも安心です。登録後は自分に合った求人がすぐに確認でき、担当者とのオンライン面談を経て、最適なキャリアプランの提案を受けることができます。
②施工管理ジョブ
引用:施工管理ジョブ
「施工管理ジョブ」は、建設業界に特化した転職エージェントで、施工管理や設計、CADオペレーターなどの職種に対応しています。業界最大級の求人数を誇り、非公開求人も多数保有、未経験者からベテランまで幅広い層に対応可能です。
特に、教育制度が充実している企業の求人が多く、未経験者でも安心してキャリアをスタートできる環境が整っています。また、履歴書や職務経歴書の添削、面接対策などのサポートも充実しており、転職活動を全面的にバックアップしてくれます。全国対応で、地方在住の方でも利用しやすいのも魅力の一つです。
③RSG建設転職
引用:RSG建設転職
「RSG建設転職」は、建設業界に特化した転職エージェントで、常時5,000件を超える業界トップクラスの求人案件を保有しています。特に、収入アップ率99.4%、平均1.2倍~1.5倍の年収アップ実績があり、キャリアアップを目指す方に最適です。
建設・人材業界出身のキャリアコンサルタントが、求職者一人ひとりの希望やスキルに合った求人を厳選して紹介。また、オリジナルの面接攻略法や職務経歴書の添削、業界・企業情報の提供など、転職サポートが充実しており、初めての転職でも安心して進められます。首都圏以外の求人情報も取り扱っており、全国の求職者に対応しています。
建築施工管理の転職についてまとめ
建築施工管理への転職は、未経験であっても不可能ではありません。むしろ人材不足が続く業界の中で、育成前提で採用を行う企業は増えており、資格がなくても実務を通じて成長できるチャンスは十分にあります。ただし、どの企業でも通用するわけではなく、研修制度の有無や残業・勤務地など、働きやすさを左右する職場環境のチェックが重要です。
また、現場だけでなくアシスタント職や内勤施工管理など、未経験からチャレンジしやすい職種を選ぶことも成功において重要です。どの転職エージェントを使用していいかわからないという方は、本記事で紹介したエージェントの利用を検討してみてください。
