休職は心身の健康回復やキャリアアップなど、さまざまな理由で取得されます。その期間中、収入減少への不安から副業を検討する方も多いでしょう。しかし、休職中の副業はさまざまな制約やリスクが存在します。
本記事では、休職中の副業について可能かどうかについて解説します。また、禁止されるケース、注意点、よくある質問もあわせて網紹介します。休職期間を有効活用し、将来につなげるためにも、正しい知識を身につけておきましょう。
休職中に副業はできるのか
結論から言うと、休職中の副業は可能です。ただし、いくつかの条件や制限があります。
基本的には勤務先の会社次第
休職中に副業が可能かどうかは、主に勤務先の会社の就業規則や方針によって決まります。多くの企業では、副業に関する規定を設けており、特に休職中の副業については制限や禁止を明記している場合があります。
仮に、就業規則で「休職中の副業は禁止」と定められている場合、無断で副業を行うと規則違反となり、懲戒処分の対象となる可能性があります。
もちろん、副業を許可している企業もありますが、その場合でも休職の理由や状況によって対応が異なることがあります。休職中に副業を検討する際は、まず自社の就業規則を確認し、人事部門や上司に相談することが大切です。
休職中の副業が禁止されている4つのケース
休職中に副業を行う際には、以下の4つのケースで禁止されている可能性があります。ここでは、それぞれの状況と注意点を理解しましょう。
ケース | 概要 | 詳細 |
---|---|---|
会社の就業規則で副業が禁止されている場合 | 就業規則で副業が禁止されている |
|
傷病手当金を受給している場合 | 傷病手当金受給中の副業は原則禁止 |
|
療養専念義務に反する場合 | 副業が療養の妨げになる場合は禁止 |
|
副業が会社の利益や信用を損なう場合 | 会社の不利益になる副業は禁止 |
|
会社の就業規則で副業が禁止されている場合
前述のとおり、会社の就業規則で副業が明確に禁止されている場合、休職中であっても副業を行うことはできません。これは、休職中も会社との雇用契約が継続しているためです。
就業規則は労働契約の一部であり、従業員はこれを遵守する義務があります。トラブルを避けるためにも、就業規則に従うことをおすすめします。
傷病手当金を受給している場合
傷病手当金とは、被保険者が業務外の病気やケガで働けなくなった際に、生活を支援するために支給されるものです。受給条件の一つに「労務不能の状態であること」が含まれます。
そのため、受給中に副業を行うと「労務可能」とみなされ、支給停止や返還を求められる可能性があります。特に、アルバイトやパートなどの副業は注意が必要です。
ただし、傷病手当金を受給していても、軽微な内職程度の収入であれば認められるケースもあります。判断基準は健康保険組合によって異なるため、副業を検討する前に、必ず加入している健康保険組合に確認しましょう。
療養専念義務に反する場合
休職中は療養に専念し、早期の職場復帰を目指すことが求められます。副業を行うことで、心身の負担が増し、回復が遅れるリスクがあります。特に、病気やケガが原因で休職している場合、副業が治療や療養の妨げとなる可能性があります。
会社は、従業員に対して療養専念義務を課すことができ、これ違反すると業務命令違反として懲戒処分の対象となることもあります。副業を検討する際は、主治医や会社と十分に相談し、自身の健康状態を最優先に考えることが重要です。
副業が会社の利益や信用を損なう場合
副業の内容が、会社の利益や信用を損なうと判断される場合、禁止されることがあります。たとえば、競合他社での勤務や、会社の機密情報を利用する業務などは、利益相反や情報漏えいのリスクがあり、会社の信用を損なう可能性があります。
また、副業の内容が社会的に問題視されるものである場合、会社のイメージダウンにつながることも考えられます。副業を始める前に、その業務内容が会社の利益や信用にどのような影響を及ぼすかを慎重に検討し、必要に応じて会社に相談することが重要です。
休職中に副業を行う際の注意点
休職中に副業を行う場合、上記のリスクを回避するために、以下の点に注意する必要があります。
会社の就業規則と副業の可否を事前に確認する
最も重要なのは会社の就業規則を確認し、副業が許可されているかどうかを確認することです。許可制の場合は必ず事前に申請を行い、承認を得てから副業を開始しましょう。規定がない場合でもトラブルを避けるために、事前に会社に相談することをおすすめします。
傷病手当金や社会保険への影響を理解する
傷病手当金を受給している場合、副業収入によって支給停止や減額となる可能性があります。また、副業による収入が増えると、所得税や住民税、さらには社会保険料にも影響を及ぼす可能性があります。
また、副業の種類や収入額によっては、社会保険の加入義務が生じる場合があります。たとえば、副業先での労働時間が一定以上となると、社会保険への加入が必要となり、その情報が本業の会社に伝わる可能性があります。
副業収入が増えることで、税金や社会保険料の負担が増加し、結果的に会社に副業が知られかねません。副業を始める前に、これらの影響を十分に理解し、適切な対策をすることが重要です。
体調管理を優先し無理のない範囲で行う
休職の主な目的は、心身の回復と健康の維持でしょう。副業を行うことで体調に負担がかかり、回復が遅れるリスクがあります。特に、病気やケガが原因で休職している場合、副業が治療や療養の妨げとなる可能性があります。
また、メンタルヘルスの観点からも、無理のない範囲で活動を行うことが求められます。過度な労働やストレスは、心身の健康に悪影響を及ぼす可能性があるため、適切な休息とバランスの取れた生活を心掛けることが大切です。
確定申告の準備をしておく
副業で得た収入が年間20万円を超える場合、確定申告が必要となります。確定申告を怠ると、追徴課税やペナルティの対象となる可能性があります。
副業収入を申告する際、住民税の納付方法を「普通徴収(自分で納付)」に設定しないと、会社に副業が知られるリスクがあります。副業を行う際は、収入や経費の記録を適切に管理し、確定申告の準備をしっかりと行うことが重要です。
休職中の副業が会社に発覚するリスクは?
休職中に副業を行うと、会社に発覚するリスクが高いです。たとえば、副業による収入増加に伴い、住民税や所得税が増額されると、会社の経理担当者がその変化に気付く可能性があります。
また、副業先で社会保険に加入する場合、その情報が本業の会社に伝わり、副業が明らかになることも考えられます。また、同僚や知人など、周囲からの密告によって発覚するケースもあるでしょう。
会社にバレずに副業を行うことは難しく、リスクが伴います。会社のルールに従い、適切に申請・承認を得てから行いましょう。
休職中の副業におけるトラブル事例
休職中の副業に関するトラブル事例として、うつ病で休職中の社員が他社で副業を行い、会社がこれを禁止したケースがあります。私傷病休職制度は、会社が解雇を猶予し、従業員に治療の機会を提供するものであり、休職中は療養に専念する義務(療養専念義務)が課せられます。
この義務に反して副業を行うことは、労務提供義務に違反するとみなされ、会社は当該社員に対して副業の中止と療養専念を命じる業務命令を出すことができます。
この業務命令に従わない場合、懲戒処分の対象となる可能性があります。実際に、休職中にオートバイ店を開業した社員に対する懲戒解雇処分が有効と認められた裁判例も存在します。休職中の副業は法的にもリスクが伴うので、前述のようにトラブルが起こらないように確認・準備しておくことが重要です。
休職中の副業に関するよくある質問
以下では、休職中の副業に関する質問をまとめました。ぜひ参考にしてください。
休職中の副業に関して、法律上の明確な禁止規定はありません。しかし、会社の就業規則や労働契約で副業が制限されている場合があります。特に、私傷病休職中は療養専念義務が課せられることが多く、副業がこの義務に反すると判断される可能性があります。
そのため、休職中に副業を行う際は、まず会社の就業規則を確認し、人事部門や上司に相談することが重要です。
傷病手当金は、業務外の病気やケガで労務不能となった際に支給されるものです。受給中に副業で収入を得ると、「労務可能」とみなされ、支給停止や返還を求められる可能性があります。
特に、アルバイトやパートなどの収入が発生する副業は注意が必要です。内職や投資など、労働とみなされない活動については認められる場合もありますが、詳細は健康保険組合や専門家に相談することをおすすめします。
完全に会社にバレずに副業を行うことは難しいです。住民税の徴収方法を「普通徴収」にするなど、リスクを軽減する方法はありますが、根本的な解決にはなりません。最も安全な方法は、会社のルールに従い、適切に申請・承認を得てから副業を行うことです。
副業で得た所得が年間20万円を超える場合、確定申告が必要となります。確定申告の期間は、通常、毎年2月16日から3月15日までです。この期間内に、前年の1月1日から12月31日までの所得を申告します。
申告を怠ると、追徴課税やペナルティの対象となる可能性があります。副業を行う際は、収入や経費の記録を適切に管理し、確定申告の準備をしっかりと行いましょう。
復職後に副業を継続するかどうかは、会社の就業規則や労働契約によります。多くの企業では、副業に関する規定を設けており、特に競業避止義務や職務専念義務に反する副業は制限されることがあります。
副業が本業の業務に支障をきたさないか、会社の利益や信用を損なわないかを確認することが重要です。復職後に副業を継続したい場合は、事前に会社の規定を確認し、人事部門や上司に相談することをおすすめします。
休職中に副業を始めるなら事前確認が大切
休職中の副業は、収入を得る手段として有効ですが、さまざまなリスクや制約が伴います。最も重要なのは、会社の就業規則を確認し、副業の可否や必要な手続きを事前に把握することです。
また、傷病手当金の受給状況や療養専念義務など、自身の状況を考慮し、慎重に判断する必要があります。安易な判断で副業を始めると、懲戒処分などの不利益を被る可能性があります。本記事を参考に、正しい知識を身につけて適切な手続きを踏んだ上で、安全に副業を行いましょう。
