AIエンジニアは名前が知られ始めたばかりのエンジニア職の1つです。実力や基本知識を証明できる材料が少なく、出身大学(学部・学科)の名前やITエンジニアの経歴を相手に示しても、AIエンジニアとしての実力が認められないことも少なくありません。
そこで、AI関連の資格を取得することがおすすめです。本記事ではAIエンジニアに役立つ10個のおすすめ資格を紹介します。
AIエンジニアの特徴とは?ITエンジニアの違いも解説
まずはAIエンジニアの定義や一般的なエンジニアとの違いを説明します。
AIエンジニアとは
AIエンジニアは、AIの技術を活用して主にシステムの開発やデータの学習、分析を担当する仕事です。AIとは人工知能(Artificial Intelligence)の略で、人間の脳を模した機能(計算・思考)を目指す機械やシステムのことです。例えば、画像認識やAI生成などが挙げられます。
AIエンジニアとITエンジニアの違い
AIエンジニアは、他のITエンジニアと区別して、最先端のAI技術を使用するエンジニアのことを指します。なぜなら、AIの定義では「計算機能のあるコンピュータ」も広く「AI」と呼ばれていたからです。そこで広義のAIではなく、AIの狭義の意味でディープランニングや機械学習の技術を指すのです。
資格取得をおすすめする理由は?AIエンジニアに求められるもの
AIエンジニアに資格取得をおすすめする理由は、AIを専門とするエンジニアが日本国内でもまだ成り手が少なく、所有資格がスキル・知識の証明となるからです。
実際に、「AIエンジニア」という職は、大雑把なエンジニアの分類で明確な基準はありません。しかし、はっきりした基準はなくても、数学や統計、プログラミング言語(Python)などの開発でAIを扱うための基礎的な知識が必要です。
そこで、後述する資格を取得して、AIエンジニアに必要となる基礎知識を示すことが可能です。以上のように、AIエンジニアにはAIの専門知識や数学・統計といった情報工学に精通する人物が求められています。
AIエンジニアに役立つ資格10選
AIエンジニアに役立つ資格を以下にまとめて10個紹介します。
資格名 | 試される・認定されるスキル |
G検定(ジェネラリスト検定) | 「ディープラーニング」の知識・スキルを試す民間資格 |
E資格(エンジニア資格) | 「ディープラーニング」を実装・開発スキルを持つ専門技術者を認定する |
AI実装検定 | AIや数学、ディープランニング(モデル)の実装スキルを確認する |
Pythonエンジニア認定試験 | 「Python」のプログラミング言語の知識やスキルを認定する |
Professional Data Engineer | データを活用した専門家としてのスキルを確認する |
統計検定 | 統計知識を測る |
データベーススペシャリスト試験 | AIエンジニアの基本としてデータベース技術を示す国家資格 |
認定AI・IoTコンサルタント(AIC) | 「AI×IoT」によるコンサルティング能力・技術を示せる |
データサイエンティスト検定 | データ収集やその活用に必要な数学や統計知識などを確認する |
画像処理エンジニア検定 | 画像処理の技術やスキルを確認する |
G検定(ジェネラリスト検定)
「日本ディープラーニング協会(JDLA)」が開催するAIの基礎を問う検定試験です。G検定の「G」は「Generalist(ジェネラリスト)の略で、その意味は「さまざまな方面の一般知識を持つ人」となります。
特にG検定では、AIの広範な知識を意味し、その主流となる「ディープラーニング」の知識・スキルを試す民間資格です。1回の試験で5,000人前後が合格しており、総合格者数は約9.5万人に達しています。(参照元:https://www.jdla.org/news/20241125001/)
基礎知識だけでなく、深層学習の応用例や法律・倫理、社会など、広く社会人にAIエンジニアとして求められる資質を確認する内容です。
E資格(エンジニア資格)
「日本ディープラーニング協会(JDLA)」が年2回提供するエンジニア向けの試験です。E資格の「E」はそのまま「Engineer(エンジニア)」を意味しています。これに関連し、AI技術の「ディープラーニング」を実装・開発スキルを持つ専門技術者を認定することがこの民間資格の目的です。
受験資格を得るためには、JDLA認定プログラムで「ディープラーニングの理論や実装に関する講義」を修了する必要があります。
また、後日の試験では、統計や情報処理の数学的な基礎知識からアルゴリズム、実際の開発応用に至るまで、幅広い内容が問われることです。
これまでに累計約8,500人が資格を取得しています。(参照元:https://www.jdla.org/news/20240920001/)
E資格に法律・倫理や社会を問う出題はなく、AI分野で技術重視の実践的な知識を示すものです。企業でAI研究・開発を担うAIエンジニアにおすすめです。
AI実装検定
「AI実装検定実行委員会(AIEO)」が提供する民間資格です。試験の易しい順にB級、A級、S級の3つのいずれかの試験に申し込みます。試験内容は主にAIや数学、ディープランニング(モデル)のスキル確認です。
試験名の通り、「実装」に重点を置いています。その中でもS級は50題のさまざまなAIモデルについて問う難関試験です。
正答70%以上で合格となり、合格者にはロゴが発行されます。実践的なAI技術やスキルを示したい人におすすめです。
Pythonエンジニア認定試験
「Pythonエンジニア育成推進協会」が主催する民間資格です。試験は年中いつでも受けることができます。
機械学習を扱える「Python」のプログラミング言語の知識やスキルを合格者に認定します。基本は「Pythonエンジニア」向けの試験で、AIエンジニアにとってもPythonは基礎知識の1つです。
試験には「Python3エンジニア認定基礎試験」や「Pythonエンジニア認定データ分析試験」など4つがあります。基礎から応用までそれぞれ異なるスキルを評価し、それに合格すれば難易度ごとのスキル・能力を証明できます。
Professional Data Engineer
「Google Cloud」が提供する認定資格の1つです。データを活用した専門家としてのスキルを確認する試験です。
試験は、クラウド環境におけるデータの設計や運用、分析が主な内容です。例えば、「データ収集」や「データ処理システムの設計」、「機械学習モデルの実装」など幅広いことでも知られています。
また、「Google Cloud Platform(GCP)」の活用スキルも必要です。そのため、この資格を取得すれば、GCPの専門性を示せると同時に、データを活用したい企業でAIエンジニアのキャリアを築きやすくなります。ただし、資格の難易度が高いため、AIエンジニア初心者には他の資格から取得することをおすすめします。
統計検定
「日本統計学会」が提供する統計知識を測るための全国統一試験です。4級から1級までの全5階級があり、難易度に合わせていつでも申し込んで試験を受けられます。
また、試験をパソコンで回答する仕組み「PBT方式」や「CBT方式」を採用しており、場所はどこからでも受験可能です。合格者は難易度によって多少違いはありますが、200人前後が合格しています。(参照元:https://www.toukei-kentei.jp/info/past/)
そして、試験には電卓を持ち込むことができます。AIに限らずビジネスや研究、教育現場で統計データを活用するスキルを証明する資格におすすめです。
データベーススペシャリスト試験
「情報処理推進機構(IPA)」が実施する4つのレベル試験の中で最上位の資格です。情報処理の法律にも定められており、AIエンジニアに関連した数少ない国家資格です。
そのため、他の民間資格よりも実力証明としての知名度があります。そのため、資格取得によってデータベース技術の高度なスキルを証明することができます。
ただし、AIやディープランニングには特化していません。AIエンジニアの基本としてデータベース技術を示すことを目的に受験するのがおすすめです。
ただし、合格率は15%前後と低く、AIエンジニアが時間をかけて学習する割にAIに必要なスキルをさほど証明できません。優先度は他の資格と比べて低いでしょう。
認定AI・IoTコンサルタント(AIC)
「一般社団法人AI・IoT普及推進協会」が実施するAIコンサルタント向けの民間資格です。AIエンジニアの業務の1つがコンサルティングです。特に内閣府が推奨し、支援側の専門的な「AI×IoT」によるコンサルティング能力・技術を示せます。
合格率は80%~90%ほどです。(参照元:https://winwin-system.jp/service/ai_iot_ikusei.html)試験レベルに応じて「ジュニア」や「シニア」「マスター」があり、資格取得研修として0.5日、2日、3日の実施が取得条件となります。
そのため、技術的な知識に傾倒せず、ビジネスの視点からAIやIoTを提案・導入し、企業全体で経営課題にそって活用できる戦略的思考と実践面も試されるのです。
データサイエンティスト検定
「データサイエンス協会」が行うデータサイエンスに関する民間の資格試験です。AIエンジニアにとって必要なデータ収集やその活用に必要な数学や統計知識、ビジネス課題解決への活用などが主な試験内容です。
ちなみに、合格率は40~60%と毎回異なるため注意が必要です。合格基準も毎回違っており、77~80%をクリアするように十分学習する必要があります。(参照元:https://www.datascientist.or.jp/dscertification/results/)
しかし、合格ができればデータ分析スキルの証明やキャリアアップを目指せます。データを実践的に扱える人材として企業にアピールすることもできます。
画像処理エンジニア検定
「公益財団法人 画像情報教育振興協会」が実施する4つある「CG-ARTS検定」の1つです。特に、AIエンジニアに必要となる画像処理の技術やスキルを確認できます。
試験は、画像処理分野の基礎知識としてデジタル画像や情報技術、知的財産権などから出題される内容です。その上で、試験区分には「ベーシック」と「エキスパート」の2つがあります。
例えば「ベーシック」では画像の広い基礎知識とシステムの処理知識が問われ、「エキスパート」では画像処理の実践的な生成、復元、解析など実務に即した高度なスキルや応用力が問われます。AI画像生成や処理に携わるAIエンジニアにおすすめの民間資格です。
AIエンジニアが資格を取るメリット
AIエンジニアは、AIまわりの専門的な資格を取ることでさまざまなメリットがあります。
- スキルや技術を証明できる
- AIの基礎知識を学ぶ機会になる
例えば、エントリーシートの資格欄や自己紹介に取得資格名を追加するだけでスキルや技術を持つことを企業に示せます。そのため、転職や新規案件の獲得時に有利です。
また、統計・データ処理やPythonなどのプログラミング言語、それらを支えるAIの基礎知識を学べる機会にもなります。
もし、AIエンジニアの資格を活かして転職を希望する場合は、以下の記事も参考にしてください。
AIエンジニアの国家資格と民間資格の違い
AIエンジニアに特化した専用の資格はいまのところありません。そのため、関連資格を取得することになります。その際に注意したいのが、国家資格と民間資格の違いです。
国家資格は、知名度も高く資格として広く認知されているため、実力を証明する近道です。しかし、国家資格にAIエンジニア関連の資格はほとんどありません。したがって、それをカバーできる民間資格を活用しながら、必要な基礎知識や技術を学ぶ機会にしましょう。
また、AI系の資格の他にもこれからの時代に役立つスキルは他にもあります。以下の記事もご参考ください。
AIエンジニアに役立つ資格のまとめ
AIエンジニアには、取得することで役立つ資格があります。今回紹介した10選の資格から基礎知識を固める、実践的に仕事に役立てるなどを目的に学習を始めることです。
民間資格と国家資格があり、AIエンジニア向けの資格は民間のものが中心となります。ただし、むやみに取得してもスキルや実力を示せないこともあります。
受験には時間もお金もかかりますから、その資格が本当に必要か上記から確認することです。その上で自分に必要な資格の取得を目指しましょう。
