退職というと、「将来への不安」「会社への罪悪感」など、ネガティブな側面ばかり着目されますが、退職は次にステップへ踏み出す重要な一歩でもあります。そのスタートを気持ちよく切るためにも、正しい退職方法を知り、万全に準備することを心がけましょう。
本記事では、円満に退職する方法・手続きの流れを、図や一覧表を使ってわかりやすく解説します。やってはいけない退職方法もお伝えするので、スムーズな退職方法を知りたい方もぜひご一読ください。
退職方法について知っておくべきこと

退職を決意した際、知っておくべきことがいくつかあります。特に、円満かつ後悔のない退職を実現するためには、退職の種類や法的な側面に関する正確な知識は必ず把握しておきましょう。
ここでは、退職する方が押さえておくべき、退職に関する重要な2つのポイントを解説します。
- 自己都合退職と会社都合退職の違い
- 退職に関する法律
①自己都合退職と会社都合退職の違い

退職には大きく分けて、以下の2種類があります。
- 自己都合退職→転職や家庭の事情など、個人的な理由によるもの
- 会社都合退職→会社の倒産、リストラ、退職勧奨など、会社側の理由によるもの
この2つの違いが特に大きく現れるのが、失業保険の給付条件です。
- 自己都合退職は手続き後、7日間の待機期間+1~3ヵ月の給付制限あり
- 会社都合退職は待機期間のみで、すぐに給付開始。給付期間も長め
この自己都合と会社都合は退職願ではなく、離職票での記載内容で決定します。そのため、退職後にもらう離職票の退職理由欄は必ずチェックし、違いがあれば申し立てを行いましょう。
②退職に関する法的なルール
さて、退職を検討する上で、そもそもどのような法的なルールがあるかも知っておきたいところです。ここでは、正社員の退職に関する法的なルールを表にまとめました。
| 項目 | 内容 | 法律 |
| 退職予告期間 | 最低2週間前 | 民法第627条 |
| 退職の自由 | 労働者はいつでも退職可能 |
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| 証明書請求権 | 会社に対する退職理由証明書請求権 | 労働基準法第22条 |
| 解雇予告 |
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労働基準法第20条 |
| 解雇制限 | 社会通念上の相当性が必要(合理的理由) | 労働契約法第16条 |
| 禁止される解雇 |
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参照:厚生労働省「仕事を辞めるとき、辞めさせられるとき」
法的な問題やトラブルが発生したら
上記のような法的なルールを踏まえてもなお、退職に関して不明な点がある場合や、会社との間で問題やトラブルが発生した場合は、速やかに以下の専門相談窓口を利用しましょう。
- 労働基準監督署
- 総合労働相談コーナー
これらの窓口では、労働者の権利や労働関係の法律に関する相談を無料で受け付けています。
法的ルールに不安な方は転職エージェントがおすすめ
とはいえ、やはり転職時の法的なルールに不安を感じる方もいらっしゃるでしょう。
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退職方法・手続きを一覧で解説!

周囲に迷惑をかけず、気持ちよく円満退職するためにも、退職方法は、きちんとした手順を踏んで進めましょう。ここでは、上記表をもとに、一覧表も交えながら円満退職の方法を5つのステップで解説します。
退職方法は、上記画像のように大きく5つのステップに分かれます。
- 退職の意思表示
- 業務引き継ぎ
- 有給休暇の消化
- 最終出社
- 公的手続き
ステップ1. 退職の意思表示
円満退職方法の最初のステップは、退職を決意したら直属の上司に直接、丁寧に意思を伝えることです。突然の申し出は混乱を招くため、退職希望日の1~3ヵ月前を目安に切り出すのが、会社への配慮につながります。
まずは口頭で相談を始め、上司の理解を得られた段階で正式に退職願を提出しましょう。就業規則に退職の予告期間が定められているケースもあるため、事前に確認し、ルールに則って進めてください。
ステップ2. 業務引き継ぎ
退職届が受理されたら、後任者が困らないよう、業務引き継ぎを徹底しましょう。担当業務の洗い出しやマニュアル作成はもちろん、社外の関係者への連絡も計画的な方法で進めてください。
ただし、引き継ぎの際は、会社が「退職を内密にしたい」と希望するケースもあるため、あらかじめ退職の旨を外部に伝えて良いか、上司の許可を得ておくことが重要です。この方法により、会社の意向を尊重し、不要なトラブルを回避できます。
ステップ3. 有給休暇の消化
円満退職方法の秘訣は、有給休暇の計画的な消化も挙げられます。労働者には有給休暇取得の権利がありますが、やはり退職時に使う場合、業務引き継ぎに支障が出ないよう、上司と相談しながらスケジュールを立てなければいけません。
勤務期間内に有給取得が難しい場合は、退職日と業務終了日をずらすなど、柔軟な方法も取り入れた解決方法を探ってください。なお、慌てないためにも、このタイミングでデスク周りの整理や会社備品の確認・返却準備も進めておきましょう。
ステップ4. 最終出社
最終出社日は、これまでお世話になったことへの感謝を伝える大切な日です。同僚や先輩、上司などへ直接またはメールで丁寧に挨拶し、特にお世話になった上司には、出勤時と退勤時の「2回挨拶」を心がけましょう。
挨拶の方法で重要なのは、言葉に感謝の気持ちを込めること、そして相手の時間を必要以上に奪わないことです。心に残る退職の一日を過ごすためにも、短時間で切り上げる配慮も忘れず、最後まで自分本位な行動・発言を慎んでください。
この際、同時に、健康保険証や社員証、PCなど、会社に返すべきものも返却します。退職時に必要な書類は以下の表をご確認ください。
退職時に必要な書類
| 書類名 | 用途 | 受取時期 | 備考 |
| 離職票 | 失業保険申請 | 退職後10日~2週間 | 失業保険受給者のみ必要 |
| 源泉徴収票 | 年末調整・確定申告 | 退職後1ヶ月以内 | 転職先、確定申告で必要 |
| 雇用保険被保険者証 | 転職先の雇用保険加入 | 退職時 | 会社保管の場合あり |
| 年金手帳 | 年金手続き | 退職時 | 2022年4月1日以降廃止 |
| 退職証明書 | 各種手続きの証明 | 退職時(必要時) | 離職票より早く発行可能 |
確定申告は、再就職先が決まっていない方、年をまたぎ再就職する方が必要です。
確定申告の方法については以下の記事で解説しています。自宅からスマホでできる申告方法もお伝えしているので、該当する方はぜひチェックしておいてください。
ステップ5. 公的手続き
退職後は、公的な手続きも必要です。次の職場が決まっているかどうかで手続き内容が変わるため、自分の状況に合わせて行動しましょう。健康保険や年金、雇用保険、住民税の切り替えなどは放っておくと損をする場合もあります。
以下に、状況別の手続き項目をまとめました。
公的手続き一覧表
| 手続き項目 | 転職先あり(すぐ入社) | 転職先あり(空白あり) | 転職先なし(無職) |
| 失業給付金 | 不要 | ハローワークで申請 (入社日まで支給) |
ハローワークで申請 (求職活動が必要) |
| 健康保険 | 新会社の社会保険に自動加入 | ①任意継続 ②国民健康保険 ③扶養から選択 | |
| 年金 | 新会社の厚生年金に自動加入 | 14日以内に「国民年金」に切り替え | |
| 住民税 | 転職先で引き続き特別徴収 | 自治体が送付する納付書で普通徴収へ切り替え | |
退職後の手続きについて、より詳細な情報をお求めの場合は、以下の記事をご参照ください。各手続き項目を詳しく解説しています。
円満な退職方法のポイント4つ

円満な退職方法を目指すには、「伝えるタイミング」「伝え方」など、複数の要素に配慮してください。ここでは、スムーズに退職方法を進めるために押さえておきたい4つのポイントをご紹介します。
- 退職の意思はタイミングよく伝える
- 退職願は書面とメールでしっかり残す
- 納得感のある理由を簡潔に伝える
- 感謝の気持ちを言葉で示す
①退職の意思はタイミングよく伝える
退職を決めたら、まずは自社の就業規則を確認しましょう。退職を申し出る期限(1ヶ月前など)は会社ごとに異なるため、ルールを守ったうえで早めに動くことが大切です。
伝える方法は、まず相手は直属の上司に対し、タイミングを見計らって個別に相談してみましょう。この際、退職の意思と希望日までしっかり伝えてください。
②退職届は書面とメールでしっかり残す
退職の意向は口頭だけでなく、退職届などの書面でも伝えましょう。退職届を提出したあと、メールでの補足連絡も加えておくと、記録として残り安心です。
退職届の提出先が人事部になるケースもあるので、手続きの流れや書類の扱い方法については事前に確認しておいてください。
③納得感のある理由を簡潔に伝える
退職理由は、会社側が納得できるような内容にまとめましょう。転職やキャリアの方向性など、できる限り前向きな理由を中心に構成してください。
また、「相談」ではなく「報告」の姿勢で簡潔に伝えることで、自分の決意を明確に示せます。なお、退職に関する情報は、すべてを正直に話す必要はなく、特に転職先の社名については、基本的に伝える義務はありません。
④感謝の気持ちを言葉で示す
退職の際には、どんな経緯があったとしても「お世話になりました」と感謝の気持ちを言葉で伝えることが大切です。言葉にするか否かで、退職時の印象が大きく変わってきます。
この際、新職場の話や待遇を尋ねられた場合、簡潔に回答し、決して引き合いに出さないことが重要です。最後まで謙虚な姿勢を保ち、円満な関係を維持することを心がけてください。
退職方法やってはいけない・いってはダメな4つのこと
円満な退職方法は、精神的な安心感などのメリットをもたらします。逆に伝える方法を誤ると、会社との関係悪化など、希望通りの退職が難しくなりかねません。
ここでは、やってはいけない・いってはいけない退職方法、そして円満退職につながる効果的な伝え方を4点お伝えします。
- 人間関係の不満をぶつける
- 会社や組織を批判する
- 転職先を完全に隠し続ける
- 転職先の自慢をしない
①人間関係の不満をぶつける
退職理由として、現職場での人間関係の不満・愚痴を伝えるのは避けましょう。
例えば「上司の指導が理不尽すぎる」「同僚のライバル視に疲れた」などネガティブな本音を率直に語ると、以下のような問題が生じやすくなります。
- 「それなら異動を検討するから残らないか」と改善提案を受ける
- 会社側が「解決可能」と判断した場合、退職方法・話し合いが滞る
- 不満を暴露することで、他者にも人間関係の軋轢が生じる
②会社や組織を批判する
退職時には、会社や組織を批判する言葉は必ず避けましょう。例えば、「サービス残業が常態化している」「評価に贔屓目が含まれている」などと言ったところで、企業は内心以下の様に感じるだけです。
- それらの状況はすでに認知している
- 今後働く有望な人材であれば改善を試みる
- 辞める人間の箴言を受け入れても企業にとってメリットはない
上記のように、企業が損得でものを考えるのは悲しいものですが、これもやはり社会の現実です。ここは、退職する人間という立場を踏まえたうえで、これらの言葉は避けてください。
③転職先を完全に隠し続ける
転職先がすでに決まっている場合、「どこに行くのかは秘密です」と終始言い張るのは、以下のような誤解やデメリットを生じる可能性があります。
- 引き抜きを疑われる
- 競合他社への情報漏洩を懸念される
- 退職後の協力が得られにくくなる
もちろん、具体的な会社名を伝える義務はありませんが、追及された場合のみ、会社の大まかなエリア、大枠の業界、仕事内容の概要などを回答してその場を収めるのもおすすめです。
④転職先の自慢をしない
退職方法をスムーズにするためには、「今より年収が上がる」「もっと自由な働き方ができる」といった転職先の良さを強調しすぎるのも禁物です。自分では前向きなつもりでも、以下のような問題を引き起こす可能性があります。
- 「現職を見下している」と受け止められる
- 現職への不満点はそこだったのかと思われる
- 親しかった相手との人間関係に悪影響を与える
特に、待遇面や職位など、優越感につながる話題は極力避け、退職の場では謙虚な姿勢を意識してください。
退職方法で起こりがちなトラブル
退職方法は、適切な手順を踏まないと思わぬトラブルに巻き込まれる可能性があります。ここでは、退職方法でよくあるトラブル事例を表にまとめてみました。
| トラブル内容 | 対策・回避法 |
| 報告順序の間違い | 必ず直属の上司に最初に報告し、いきなり人事へ退職届を提出しない |
| 退職願の保留・隠蔽 | 退職届提出後、進捗を定期確認し、確認メールを送付して証拠を残す |
| 過度な引き留め・責任追及 | 確固たる退職理由を準備し、流されない強い意思を持つ |
| 引き継ぎ不備 | マニュアル・計画表を作成し、引継ぎ相手とコミュニケーションをとる |
| 有給消化の拒否 | あらかじめ就業規則を確認し、拒否時には人事部門に相談する |
| 退職日の一方的な延長 | 転職先への入社日を明確に伝え、延長できない根拠を示す |
退職方法におけるトラブルの多くは、事前準備不足や手順の誤りから生じます。ぜひ本記事の、退職方法を参考に、双方にわだかまりがない円満な退職を実現してください。
退職方法のやることリスト

最後に、退職方法を解説した本記事のまとめとして、退職方法のやることリストを作成しました。ぜひ、退職方法に抜け漏れがないかを、以下のリストで再確認してください。
□退職時期など具体的な計画を立てる
□ 直属の上司に退職の意思を伝える
□ 退職届を提出する
□ 業務の引き継ぎ内容を整理・実施する
□ 有給休暇の消化日程を調整する
□ 社用PC・スマホ・社員証など、会社からの貸与物を返却する
□ 健康保険や年金など、退職後に必要な手続きの確認
□ ロッカーやデスクの私物を整理・持ち帰る
□ お世話になった同僚や取引先に挨拶する
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退職方法についてまとめ
退職方法は、「円満」を意識しながら漏れなく計画的に進めましょう。
トラブルを避けるためにも、まずは会社のルールを確認し、手順通りに進めていくことが重要です。迷ったときは、ぜひ無料で利用できる転職エージェントにご相談ください。