「社内にAIに詳しい人がいないから、どんな研修を受けていいかわからない」と悩む方も多いでしょう。近年、AI技術は進化し、業務効率化や新規事業の創出など、中小企業にとっても無視できない存在となっています。
しかし、AIツールを活用するには、ただ導入するだけでなく、正しく使いこなせる人材の育成が必要です。そこで注目されているのが「AI研修」です。
本記事では、AI研修の必要性や費用相場、選び方のポイントに加え、おすすめのAI研修10選を徹底比較します。また、「研修に費用をかけたくない」という方に活用できる助成金制度についても詳しく解説しますので、ぜひ最後までご覧ください。
そもそもAI研修は必要なのか
AI技術の進歩に伴い、大企業だけでなく中小企業でもAIの活用が身近になっています。そんな中で「自社にAI研修は必要?」と思われる方もいるかもしれません。結論、業務の効率化や新たなビジネス機会創出のためには、社員のAIリテラシー向上は必要です。
ここからはAI研修が必要とされる理由と、AI人材が「いらない」と言われる真相について解説します。
AI人材は2030年に約79万人の不足
経済産業省の予測によれば、2030年には日本国内でIT人材が最大約79万人不足すると言われています。この中にはAIやデータサイエンス分野の専門人材も含まれ、特にAI専門人材だけでも約12万人以上が不足する見込みです。
引用:経済産業省
そのため、この人材不足の中で、自社に必要なAI人材を「採用」ではなく「育成」で補う動きが重要になっています。社内の現有社員にAIスキルを身につけさせ、社内でAIを扱える人材を増やすことで、人材不足時代を乗り切る戦略です。また、AIを活用したデータ分析や業務自動化で効率化を図る企業が増える中、自社にAIを使いこなせる人がいないと、生産性やサービス品質で差をつけられてしまいます。
今のうちから計画的にAI研修を導入し、人材不足の波に備えることが、特に中小企業にとっては重要と言えるでしょう。
AI人材はいらないといわれる理由
「AI人材はいらない」と言われる理由の多くは、AIの急速な進化によるものです。たとえば、ChatGPTやCopilotのような生成AIが登場し、誰でも自然言語で指示を出せば自動で文章作成やコード生成ができるようになったことで、「専門知識がなくてもAIを使えるのだから、わざわざAI人材を確保する必要はないのでは?」という意見が出てくるでしょう。しかし、これは誤解です。
たしかに生成AIの普及により操作のハードルは下がりましたが、AIを効果的にビジネスで活用するには、AIの仕組みに対する基礎理解と、業務課題との接点を見出す応用力が必須です。どの業務にどう活用すればよいのか、精度の低い出力をどう評価・修正するのか、といった判断は人間にしかできません。
特に中小企業においては、外部の専門人材を雇うのが難しいため、今いる社員を育てて「AIリテラシー」を持たせることが現実的かつ重要な戦略となります。AIツールを導入するだけでは効果は出ず、人材育成とセットで取り組まなければ「使いこなせずに終わる」可能性が高いのです。
AI研修の料金・費用相場
AI研修を受講するにあたって費用相場が気になる経営者は多いでしょう。AI研修の費用相場は外注した場合、1日あたり5万円〜10万円程度が一般的です。
研修内容や期間により幅がありますが、半日〜1日の基礎講座は数万円、数日間の長期研修では数十万円以上かかることもあります。受講人数によっても変動し、1社向けのカスタマイズ研修では、参加人数に応じて見積もられるケースが多いです。
重要なのは、目的に合った研修内容と費用を見極めること。単に高額な研修が効果的とは限らず、社員全体のAIリテラシー向上には安価なオンライン教材、社員の専門スキル強化には専門講師による研修が適しています。
AI研修における3つのタイプ別選び方
AI研修と一口に言っても、種類や目的は様々です。中小企業の経営者としては、まず「自社は何のためにAI研修を導入するのか」を明確にする必要があります。主に以下3つのタイプから、それぞれの特徴を理解し、自社の課題に合った研修を選びましょう。
- 業務改善・効率化タイプ
- スキル習得・リスキリングタイプ
- 戦略構築・ビジネスモデル転換タイプ
①業務改善・効率化タイプ
業務改善・効率化タイプは、日々の業務をAIツールで効率化することが目的です。たとえば、以下のような現場で使える具体的な活用法が学べます。
- RPAによる事務作業の自動化
- チャットボットによる問い合わせ対応
- 営業文書の自動作成
内容は、難しい理論よりも「実務でどう使うか」に重点を置いています。例えば、ChatGPTを業務に使う方法や、情報漏洩を防ぐコツなどが中心です。対象は管理部門・営業・サポートなど幅広く、プログラミング不要で参加しやすいのが特徴です。
1日程度の短期研修が多く、オンラインやeラーニングで提供されるため、全社員のAIリテラシー向上にも最適です。
②スキル習得・リスキリングタイプ
スキル習得・リスキリングタイプは、AIを扱える専門人材の育成が目的です。以下のようなAI技術を実践的に学びます。
- Pythonによる機械学習
- データ分析
- ディープラーニング
内容は、プログラミング演習やAIモデルの構築など高度な技術が中心です。対象はIT部門や新規事業担当など将来的にAI活用を担う人材。意欲と基礎知識は必要ですが、受講後は社内でAIを内製化できる力が身につきます。社内に「AIが分かる人」を育て、教育役やプロジェクトリーダーとして活用できるのがメリットです。
③戦略構築・ビジネスモデル転換タイプ
戦略構築・ビジネスモデル転換タイプは、経営層や部門責任者がAIを経営戦略にどう活用するかを考える内容です。AIツールの操作ではなく、「自社にAIをどう取り入れるか」を学ぶのが目的です。
業界のAI動向や成功事例、自社課題の整理、AI導入のアイデア創出などを学びます。ワークショップ形式で企画を立案し、ディスカッションを通じて実践的な理解を深めます。単なる効率化ではなく、事業モデル転換や新規事業開発を見据えた研修として、中長期的な企業成長につながる内容です。
おすすめのAI研修10選を比較・紹介
ここからは、研修サービス10選を紹介します。研修の価格帯・対象レベル・提供形式といった観点で比較しながら解説します。それぞれ特徴が異なりますので、自社の目的に合った研修選びの参考にしてください。
サービス名 | 価格 | 実績 | 提供形式 | 特徴 |
DX・AI人材育成研修サービス | 要問い合わせ | 官公庁・大企業含む |
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DX人材育成研修 | 要問い合わせ | 約3,000社以上 |
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DXリテラシー診断&研修 | 数万円〜/社 | 2,500社超 |
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AI_STANDARD | 50万円〜 | 1,000社以上 |
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DX人材育成サービス | 10万〜30万/人 | 官公庁含む累計400社 |
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SIGNATE Cloud | 要問い合わせ | 30万人利用 |
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AI Perfomer | 要問い合わせ | 成長ベンチャー中心 |
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DX/ITスイシンサービス | 20万〜/人 | 中小企業多数 |
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AI/DX顧問サービス | 要問い合わせ | 上場企業・経営層中心 |
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スキルアップAI「法人研修」 | 要問い合わせ | G検定合格実績多数 |
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①DX・AI人材育成研修サービス
DX・AI人材育成研修サービスは、短期集中型から長期伴走型まで自由にカスタマイズできる法人向け研修です。研修導入前に企業の課題をヒアリングし、必要に応じてコンサルティング支援も組み合わせながら最適なプランを提案してくれます。
製造業や建設業などの分野にも強い実績豊富な講師陣が在籍しており、AI教育だけでなく業務改善や新製品開発のアドバイスも可能です。研修スタイルは対面集合研修とオンラインの両方に対応しており、社員のスケジュールや学習スタイルに合わせて実施できます。
以下のリンクから詳細をチェックできますので、ご覧ください。
②DX人材育成研修
引用:株主会社キカガク
キカガクの法人研修は、ゴールから逆算したオーダーメイド設計が特徴のAI研修サービスです。企業ごとに課題やニーズを丁寧にヒアリングし、「まず何を達成すべきか」から研修内容を組み立ててくれます。オンライン・オフライン両対応で、研修後には実業務への取り組み方や今後の推進方法までフォローが手厚い点も評価されています。
また、講座カリキュラムとして日本ディープラーニング協会の認定プログラムを日本で初めて開発した実績を持ち、AI人材育成に体系立った手法を取り入れているのも特徴です。
③DXリテラシー診断&研修
引用:株式会社AVILEN
AVILENは、研修前に社員のAIリテラシーレベルを見える化する「DXリテラシー診断」を提供している点が特徴。21問の設問に社員が回答し、AI・データ活用に関する理解度を診断します。その結果に合わせて、初心者には基礎研修、中級者には応用研修というようにレベル別に最適な研修プログラムを組むことが可能です。
研修はeラーニング形式が中心ですが、実践ワークショップを組み合わせて「自社の業務でAIをどう使うか」を検討するステップも用意されています。10名から利用可能で、導入前にデモアカウントで研修内容を試せるのも安心です。
④AI_STANDARD
引用:株式会社STANDARD
STANDARD社の「AI_STANDARD」は、3ヶ月でAIエンジニア不足を解決することを目指す法人向け研修サービスです。特徴は、3種類の講座が用意されている点です。エンジニアだけでなく経営層やビジネスパーソンまで包括し、AIプロジェクトを推進できる人材を育成する総合プログラムとなっています。
具体的には、まず全社員向けにAIの基礎知識を学ぶリテラシー講座を実施し、その後プロジェクト責任者向けにマネジメント講座、技術担当向けにエンジニアリング講座を行うことで、自社内にAI開発の一連のスキルセットを構築するという流れです。
⑤DX人材育成サービス
引用:株式会社アイデミー
アイデミー社のDX人材育成サービスは、オンラインAI学習プラットフォーム「Aidemy Business」を活用した研修サービスです。230以上の学習コンテンツが用意されており、初心者から実務レベルの社員まで幅広くカバーしています。特徴的なのは、受講者の学習状況が管理画面で「見える化」される点です。
これにより、人事担当者は誰がどの程度自発的に学習を進めているか把握でき、学習意欲の高い社員をDX推進リーダーに登用するといった人材戦略にも活用できます。
⑥SIGNATE Cloud
引用:株式会社SIGNATE
SIGNATE Cloudは、実務に直結するDX人材育成クラウドサービスとして提供されています。経済産業省が定めた「デジタルスキル標準」に準拠した講座群が用意されており、社員の職種やレベルに合わせてデータ分析基礎・DXビジネス企画など適切なコースを受講できます。
オンライン学習プラットフォーム上でeラーニング講座を進めつつ、希望に応じて対面またはオンラインのハンズオン研修を組み合わせるハイブリッド型が特徴です。座学で得た知識を実際の業務課題で試す機会も提供され、学習内容が定着しやすくなっています。
⑦AI Perfomer
Cynthialy社の提供する「AI Performer」は、生成AIに特化した人材育成カリキュラムです。特徴は受講者の目的別に4つのプランを用意している点で、「手軽に学べるeラーニングプラン」「AI初心者向け基礎プラン」「社内のAI推進リーダー向けプラン」「新規事業開発向けプラン」と段階的にコースが設定されています。
「まずは社員にChatGPTの基本を学ばせたい」「各部門からAI推進担当を育てたい」「AIを活用した新規事業創出を目指したい」といった企業それぞれの目的に合った研修を選択できます。
⑧DX/ITスイシンサービス
引用:株式会社インソース
インソースは企業研修大手であり、AI研修についても豊富なラインナップを持っています。同社のDX/IT推進サービスの一環として提供されるAI研修は、初心者向けから開発実践まで階層・テーマ別に揃っているのが特徴です。
例えば、管理職やビジネスパーソン向けの「ビジネス活用のためのAI・人工知能研修」、技術者入門向けの「AI開発入門研修〜Pythonによる機械学習体験編」など、コースが用意されています。基本的に1日〜2日で完了する短期研修が多く、講師派遣型の社内研修と、公開講座形式のオープンセミナーの2種類で提供されています。
⑨AI/DX顧問サービス
引用:HEROZ株式会社
HEROZ社の「AI/DX顧問サービス」は、他の研修とは異なりコンサルティング型のサービスです。将棋AIで有名なHEROZ社の経営陣やAIエンジニアが、企業のDX推進をアドバイザーとしてサポートしてくれます。
具体的には、「何から手を付けていいか分からない」「社内にAI推進の人材がいない」といった企業に対し、経営層を巻き込んだDXの目的定義から始まり、人材不足・技術力不足の課題を踏まえた解決策のアドバイス、プロジェクト企画支援まで包括的に伴走します
⑩スキルアップAI「法人研修」
スキルアップAIは、AI人材育成スクールとして個人向け講座を多数展開していますが、法人研修にも対応しています。日本ディープラーニング協会認定第1号プログラムを提供した実績があり、AI教育カリキュラムの体系性が魅力。
法人研修では企業の要望に合わせてカスタマイズも可能ですが、同社が持つ標準コースを利用するケースが多いです。 受講者の視点に立った課題を解決するスクール作りを理念としており、実践重視かつリーズナブルな研修を心がけています。
AI研修で使用できるおすすめの助成金
最後はAI研修で使用できるおすすめの助成金について紹介します。AI研修で利用できる助成金は主に3つです。
- 人材開発支援助成金
- 人への投資促進コース
- キャリアアップ助成金
利用しやすいのは、「人材開発支援助成金」です。中小企業向けには助成率が高く設定されており、AI研修の受講料や講師費用の大部分を補助してもらえるケースが多いためです。
ただし、いずれの助成制度も事前の申請が必要で、要件を満たさなければ助成対象外になるため、制度内容をよく確認したうえで計画的に利用することが重要です。
活用方法
助成金を活用する流れについて簡単に解説します。以下の方法で手続きを行いましょう。
- 情報収集と要件確認
- 研修計画の作成と届出
- 研修の実施
- 支給申請手続き
助成金の中には条件として、従業員の一定期間の雇用継続が必要な制度もあります。制度は随時改定されるため、常に最新情報を確認し、わからない場合は公的機関の相談窓口に行きましょう。
また、以下の記事でも申請方法について詳しく解説していますので、合わせてご覧ください。
おすすめAI研修についてまとめ
AI研修の導入は、中小企業にとって自社の将来を左右する重要な経営施策と言えます。研修を通じて社員がAIの知見を深めれば、日々の業務改善から新規事業の創出まで、企業にもたらすメリットが多くあります。
まずは自社の課題を見極め、「業務効率化」「スキル習得」「戦略構築」のどの観点でAI研修を導入すべきか検討してみましょう。研修導入後も終わりではなく、社内で学んだことを共有し、実際のプロジェクトに活かすのが重要です。
